半分コしましょ?



「あなたを、愛すのみ」

何とかフォーティエイトだかエンターテイメントだか知らないが、現在人気沸騰中のアイドルグループが出演する、某氷菓子のCMにピクリと銀時が反応した。
「おいおい、こんな美人に熱烈な告白ってコレどーよ全国の男共を誑かして売り上げ伸ばそうってか、魂胆丸見えじゃね?……いやでも食いたいですむしろあなたを、っていっづああああ!」

不自然に途切れたそれ、本人は銀髪と言い張るもっさりと揺れた後頭部からプスプスと白煙を上げて倒れた。ふぅっと自らの拳に息を吐いて顔を上げたのはやけに凛々しい表情の土方で、ただでさえ端正な顔立ちの彼、男前なことこの上ない。
「いだだだだ・・・ちょ、いきなりひじかた君どしたの、いくら銀さんが好きだからってちょっとバイオレンス過ぎ・・・」
んもう、と倒れた銀時からやや上目がちな視線が向けられたが我関せず、と言わんばかりにそっぽを向いて土方は紫煙を燻らす。そしてそのままギシ、と年季の入った床板を控えめに踏み鳴らして出ていこうとするものだから、銀時は鈍痛でわんわんと響く後頭部を押さえつつ、かつ脳にあまり振動を与えないよういつぞやの忍の如く摺り足で追いかけた。



「っ、ちょ待てよおい多串君ってば!」
スナックお登勢から万事屋へと続く、所々水錆の生じた階段でどうにか脱走囚を捕えることに成功した。左手を掴まれても尚歩きだした土方につられる様にして俺も歩を進めだしたのだが。脱走囚とは言えど、どちらかといえば彼こそ本質は何処ぞのチンピラとは大して変わらないものの、対テロ武装警察なんて長ったらしく仰々しいことこの上ない紛うことなき警察官、あまつさえはそんなチンピラ集団に降臨するナンバーツーであり、己というとほんの少々叩いただけで埃が出てくるのをギリギリ誤魔化して生き延びているような何とも怪しい自営業なのだが。
まあ、それでも。

その場の流れで何となく、なんて甚だ適当ではあるが一応自分がそんな勇ましいこと限りない彼との「お付き合い」の所謂彼氏役を務めている以上、主導権を握りたい訳であってもっとこう何というか──────余裕、なんてものを持ちたい、のだ。

例え一応褥では女役を務めているはずの愛しい恋人が、己よりも果てしなく……男前でも。
そりゃ自分とは月と鼈、街を歩けば老若男女誰でも思わず振り返ってしまうような端正な容貌に沈着冷静、咥え煙草でクールに決めて吉原の廓にまで気に入られ更には幕臣と来た。
天パで糖尿寸前、従業員の子供達にはニートと罵られ全く女気のない俺だけど。
冷静に現状を分析すればする程心が折れそうになるが、それでもやはり。

彼氏としての余裕、持ちたいです、はい。

そんな切実な願いを胸の内に秘め、さながら元服したばかりの少年が初戦を迎えるような面持ちで、俺は凛と背筋を伸ばして颯爽と前を歩く土方の左手をぎゅっ、と握った。








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まだ半分コしてないとか気にしたら負けです(誰に)
今回のテーマは『限りなく土銀に近い銀土』です(これ誰得?)
ノルマは達成できたと思います
後編では銀土になる!…はずですので色々本気ですいません(土下座)

20110723
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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