イロモノ表現あり(ぬるま湯)
R指定は特に無い程度です



僕の額と君の体温が触れあったときに



最早万年床と化している万事屋のいくらか薄い布団にそっと身体を下ろされた土方は無意識のうちに、愛する男の匂いが染み付いたシーツに顔を埋めた。そこからふわりと薫るのは、この男らしいふんわりとした甘さと、雄を感じさせる汗が相俟ってひとつになっていて、こんなとこまでこいつらしいな、なんて考えるとつい可笑しさやら愛しさが胸の奥底から込み上げてくる気がして、ほんのりと無意識の内に微笑を零した。
「ちょっと土方くーん、銀さんのシーツなんか嗅いじゃって何笑ってんの。加齢臭がするとか言ってみ、俺一ヶ月は立ち直れないからね」
むすっと顔を顰めながら落としてくる言葉の数々は、普段道端で交わすような軽い応酬と酷似していたけれど。それは、まだやっと片手を超えるほどしか身体を重ねあっていない自分にとって未だ慣れない挿入への恐怖を少しでも紛らわそうとしてくれる、この男らしい優しさだと解っているから。一番に優先してやれない自分が、この男に残してやれることはとても少ないことなんて百も承知だから。
だから、せめて。
胸が一杯になってもなお溢れ続けるほどの愛を、無償で与えてくれるこいつに。ふたりきりでいられる間はこの男のものなんだと、縋るようにその、大きな背中に腕を伸ばした。
「とーしろうくん、今日はなかなか乗り気じゃん?」
「うっせぇ、俺は別にそんな気分じゃねーんだ、てめえが乗せてみやがれ」
ひゅう、と機嫌よく男が口笛を鳴らす。言ってくれるねえ、と口角を上げた銀時の顔はシーツと同様に雄の薫りに満ちていて、堪らなく欲を煽られる。もっと、もっと。己を欲しがればいいと思う。傷だらけで硬いこんな身体をこいつが誰より欲してくれるから。せわしなく襲ってくる快楽の波に素直に身を委ね、土方は、己よりか幾分広い肩に躊躇いがちに両腕を伸ばした。



頬を上気させ、普段よりも熱を孕んだ漆黒の双眸に見つめられ、銀時は理性がぎしぎしと軋んでいくのを感じながらも、あくまで優しくその艶やかな肢体に指を滑らせていった。傷だらけで硬いこの身体が何よりも大切で、大切で、大事にしたいと思うから。そっと伸ばされた腕に微笑み、硬い身体の至るところに唇を落としていく。すれば、決して嬌声をあげることはなくとも時折ふと漏れる熱の籠もった吐息に、激しく欲情して。必死に被っていた余裕の皮がずるりと剥けて本能だけが露になった、そんな錯覚を覚えた。
「………土方、悪いけどこれ以上保ちそうにねーわ」
「、っはっ」
一応そう告げてはみたものの、快楽に翻弄されている真っ最中の土方にはいまいち通じてないようで、イロイロと今かなりヤバい状況なんだよね、と呟いたがそれすらも届いているかは怪しいところだ。でも、
「いつもはあんなにカンペキな副長サンやってる、ってのにねー」
普段、武装警察のナンバーツーなんてどこまでも重たいものを背負って、感情なんて何処に置き忘れてきたのかと問いたくなる程だけれど。自分の前だけではこんなにも曝け出してくれる、その事が何よりも嬉しいし、素直じゃない彼からの精一杯な愛情表現だと解るから。
「今日は、泣いて鳴いて頼んでも離してやんねーから」
黒髪をぱさぱさと振り、しどけない艶やかな肢体を惜し気もなく晒した土方の耳朶にそっと言葉を落として。うっかり何処かでドエススイッチが入ってしまったらしい己に苦笑しながら、硬く立ち上がりかけている土方の胸の頂をそっと口に含んだ。



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(欲を滲ませた黒曜の双眸に)






理性が、融けていく




次回R指定予定(爽笑)
やるまで長ぇーよこいつら
20110623
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