視えなくたっていい(上)



視えない。
みえない
ミエナイ




「ああああああ!もう腹立つ山崎ィィィ!」
癇癪をおこした土方に恐れおおのきながらも山崎は一応はいよ、と返事をして襖の前に立った。顔が見えなくてもその怒気はびりびりと此方まで伝わってくる、山崎は死刑を宣告された罪人のような面持ちで、ある意味執行人よりも恐ろしい鬼の言葉を待った。
「山崎」
はい、と消え入りそうな程のか細い声で応えた。
「入れ」
俺何かしたっけ、最後に己の失態を振り返ってみたが何も思い浮かばない。今日は目が回る程忙しくミントンはおろかラケットにすら触れていない。やはり、只の八つ当たりだろう。
失礼しますと声をかけそっと室内に足を踏み入れた。入った瞬間の煙草の煙に、相当苛立っていることが分かった。煙で心情分かるって俺どんだけだよ、と内心つっこみつつもそれは他のどの隊士より自分が彼と過ごした時間が大分に長いことを示していて。何となく、誇らしくなってくる。
そんな山崎の胸の内を知る由もなく、土方は普段より幾分か低い声音で話し出した。
「俺のコンタクト、んでストックしてねぇんだよ」
はぃぃっと山崎が余りにも唐突すぎるそれについていけずすっとんきょうな声をだせば、うるせぇと殴られた。哀しいかな、理不尽な扱いには既に慣れっこなので取り敢えずコンタクトについて問い質そう。そもそも副長コンタクトはめてたの、という根本的な部分から知らなかった。
「ふ、副長!コンタクトってどういうことですかあんた、目悪かったんです?」
もう一発、と殴られそうになったが慌てて声を出して止めさせる。全く、とんだドメスティックバイオレンスだ。
「……あれ、俺山崎に言ってなかったのか?じゃあ……つか誰にストック頼んでたんだ?」
知りませんよ、と返す山崎にむぅぅと土方は唸る。言い方が妙に愛らしくて、全く変な所で可愛げがあるんだからうちの上司は、山崎がほぉっと溜息をついてそんな彼を見上げた。するとそこには、

「うぉああ、っぇえ?っ!」
理解に苦しむ母音の羅列とその声量に土方が眉を顰めて怒鳴ろうとしたが、ふふ副長という山崎のうろたえた声に遮られて。仕方なくまた一本煙草を咥えることに留めておく。
「副長っ!」
んだよ聞こえてんだからさっさと言え、土方の不機嫌気味な暴言にも屈することなく山崎は叫んだのだった。

「ふ、副長が黒縁眼鏡!」

余りにも似合っているそれに、暫し見惚れる山崎。真っ直ぐな黒髪とやや瞳孔の開いたシャープな切れ長の瞳に男にしては白い肌、そんな土方の整った顔立ちに黒い眼鏡はよく映えていた。










つづく………とおもう

memoみた方は分かったと思いますが眼鏡ってことは、はいそうですとも私事ネタですねごめんなさい
とーしろくんに眼鏡似合うからいいじゃん!という言い訳でお許しくださいな(^^;)








(あとがき)
とくにないよ
20110529
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