成島くん誕2012 三回目のコール、もしもし? と聞こええた声がうれしくて、思わず声を張り上げたら怒られた。ひどい。 「なんで怒るの!」 「花枝がいきなり叫ぶからだろ!」 「うれしくてつい」 「えっ、まさかお前も俺のこと……」 「きりちゃん的に言うなら友愛だね!」 打ち合わせでもしてきたの、とびっくりしたような声。実際はきりちゃんにどんなお祝いしたのか訊いただけなんだけど、もしかしたらわたし、エスパーに見られてるかもしれない。テレビ出れるだろうかとのんきに考えながら、携帯電話を持ち直した。 「それでね成島くん」 「なに?」 「日曜日暇?」 「暇だけど、なに? またパーティーすんの?」 「ううん、ねずみーらんど行こう。っていうかチケットとっちゃった」 「えっ」 「チケットとっちゃった」 大事な事なので二回いいました。 まあ、まだきりちゃんにも言ってないけど。暇だとは言ってたから、きっと大丈夫。 「まずね、いろいろ食べるでしょ」 「最初から食べるのかよ」 「いいでしょー! でね、絶叫系に乗ろう!」 「土下座するからほんとにやめろ!」 「えー、どうしよう」 「いやまじで」 「あ、ねえねえ」 「……はい」 「お誕生日おめでとう!」 「どーも」 「ねずみーらんどにいるリスとおんなじ誕生日だね!」 「え、そうなの?」 「うん。あと緑の怪獣と赤いもふもふもね!」 「いや、あれ雪男だろ」 「そうなの!? じゃあ成島くんも雪男!?」 「なんでだよ!」 「誕生日同じだからそうかなって……」 「おかしいだろ」 「みんなに言わなきゃ……」 「やめろ」 「冗談だってばー」 笑いながら、成島家のインターホンを押す。顔を出した成島くんが驚いていたのは言うもでもなく。だって去年決めたんだもの、今年はわたしが直接届けようって(演劇部に宅急便の制服があったからそれを借りた。なんでもあるんだね!)。 「お誕生日おめでとう!」 差し出したのは二冊目のそれ。 ねえ、今度、描いた絵を見せてね。 |