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 レンくん誕

 どうしよう。
 さっきからそればっかりだった。と言うより、それしか考えていない、と言うのが正しいのかもしれないけれど。率直に言うと、困っていた。それはものすごく。

 何がいいのか分からないし、時間ももう残り少ないし。ベットの上でゴロゴロと転がりながら、枕に顔をうずめる。口から吐き出される息は、どこか頼りないものばっかりで。
 ――そういえば、きちんとお話したこともないや。
 成島くんから、彼――レンくんの話を聞く事はあっても、直接会話をした事は、ない。それなのに私の想像で何かをあげると言うのも失礼な話かもしれないし。ああ、もう、まったく。
 暫く動かないままじっと考えて、答えにたどりつく。もういっそ、素直にそれを伝えよう。そこまで決まれば後はもう、自分に素直になるだけだ。素直に、伝えるだけ。
 あふれ出る言葉を抑えながら、机の引き出しを開けた。


  * * *


 春休みだと言うのに、みんな学校に居ると言うのは、少し奇妙な気がするけれど。それぐらい素敵な場所なのだから仕方ないんだと思う。
 少し先に、目的の人物を見つけて、息を吸い込む。裏返らないように、自然に。

「――レンくんっ」

 なんて思ったけど、少し失敗してしまったかもしれない。後悔しながら、ポケットからある物を取り出した。
 振り返って人懐っこい笑みを向けてくれた彼に、精いっぱいのおめでとうを。
 ハッピーバースデイ!








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