「やっぱり忍足先輩凄いですねー」
「去年の卓球でもこんな感じだったよー」
体育館の隅に座りながらジロー先輩とそう話していると、早速忍足先輩は点数を決めて、同時に周りの女子達からもきゃあっ!と黄色い歓声が沸いた。そう、何を隠そう今日は球技大会でございます。
「ジロー先輩次いつですか?」
「ん、俺次昨日で全部終わった〜」
「お気楽ですねぇ」
2日間かけて行われるこの球技大会。1日目の昨日はバドミントン、バレー、テニス。2日目の今日は卓球、バスケ、サッカー、ドッヂボールといった感じで、氷帝は学校が大きいからそれぞれの種目の規模も勿論大きい。運動部に所属してる人はその種目の競技には参加出来ない制度なので(テニス部の皆さんはテニスは出来ないみたいな)、普段見れない友達や先輩の姿に、結構心が躍る!
「おっしーお疲れ!」
「ほんま疲れたわ、うるさくてかなわん」
「それだけ先輩が人気って事ですよ!」
「おおきに」
そうこうしているうちに忍足先輩がしっかり勝って帰って来て、タオルを渡しながら迎えるものの表情は浮かない。雰囲気がとっても大人っぽい先輩は、1・2年からも憧れの存在で確かに皆キャーキャー騒いでる。でもそれは仕方ない、私だって宍戸さんや跡部先輩にはキャーキャーしちゃうもの。素敵な人に素敵と言って何が悪いのだ!という屁理屈にも似た持論は、忍足先輩相手には自爆になりかねないのでお口チャック。少しは空気を読むようになりました。
「自分は次いつなん?」
「後30分後くらいにバスケに行きます!」
「鳳と宍戸もバスケ出るって言ってたよね〜」
「あと岳人もやな。そういえば宍戸、あいつ中間考査やりよったなぁ」
そこでそんな話題を出してきた忍足先輩に、つい私は前のめりになって「本当に!!」と鼻息荒く賛同する。若干引き気味なのは慣れっこなのでもう気にしない。
前愚痴っていた通り、何故だか担任の先生に目をつけられてしまった宍戸さんは、「全教科70点以上取らなきゃ部活停止」という無茶な言いつけを、見事に90点以上取ってぎゃふんと言わせたのだ!しかも全教科!それを聞いた時の私と長太郎のはしゃぎっぷりったらもう無かった。若なんて呆れて言葉も出ない感じで、でもそれは格好良すぎる宍戸さんの所為だと思うのです。
「ほんま宍戸大好きやな」
「あの男らしさには誰もが惚れます!」
「鳳もどんどん懐いてるもんねぇ」
確かに長太郎と宍戸さんは前から仲良しだったけど、最近になってぐっと距離が縮まった感はある。一緒に練習とかもしてるみたいで、たまーに若が寂しそうなのはつっこみはしないけど、見てて思ってた。まぁなんせこの球技大会が終わったらテニス部はすぐに都大会だし、張り切るのも当たり前なんだけど。っていうのは今は置いといて!
「忍足先輩は他に競技あります?」
「もう無いで。自分ら跡部の応援は行ったん?張り切っとったみたいやけど」
「あぁおっしー、それ禁句〜」
「跡部先輩の人気度をなめてました、完全に」
「は?」
再び変えられた話題に、次はジロー先輩と目を合わせて溜息を吐く。私達はこの体育館に来る前、また違う体育館でやってるドッヂボールに参加してる跡部先輩の応援に足を運んだんだけど、まぁ混みまくってて見れる状況じゃなかった。女の子の壁ですあれは。最初は2人で背伸びしたりして頑張ったんだけど、跡部先輩も気付きそうになかったし肩を落としながら此処に来た訳です。
「なんやねん、俺の応援は仕方なしって事かいな」
「そんな訳無いじゃないですか!でも跡部先輩の勇姿も見たかったですー」
「全力でボール投げてる跡部なんて滅多に見られないから写メ撮っておきたかったのにー」
「はいはい…それよりそろそろバスケの時間やしはよ行くで」
「あ、待って下さいー!」
面倒臭そうにしつつも私の応援には来てくれるらしい忍足先輩に、再びジロー先輩と目を合わせて微笑む。この意気で行けば絶対勝てそうな気がする!