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「いってきまーす!」



始業式にしてはちょっと肌寒い春の日、今日から私は中学2年生になる。明後日からは初めての後輩も出来る訳だから心機一転、1年の時よりもしっかりしなくちゃ!と心の中で意気込む。



「おは、…どうした?」

「中々似合ってると思いませんか!」



今日は弓道部もテニス部も朝練が無いから一緒に学校行こう!と若と約束していたのでそこまで来ると、若は私の顔を見るなり挨拶を遮って驚いた顔を向けて来た。そうですその反応待ってました!と言わんばかりに大袈裟に胸を張って、昨日切り揃えたばかりの髪をファサッとかきあげる。そうです。心機一転、まずは形からという事で髪をばっさり切ってみました。



「一気に雰囲気変わったな」

「シャンプーめっちゃ楽だよ!」

「滝先輩より長いくらいか?」

「かもね!」



最初はびっくりしてた若だけど、二言目にはもういつも通りに戻った。つまんないの。そう思いつつ、とりあえず学校までの道のりをてくてく歩く。長太郎と樺ちゃんの反応が楽しみだなぁとワクワクしていると、後ろから肩をポンポンと叩かれた。だから素直に後ろを振り向けば、



「あ、忍足先輩!おはようございます!」

「おはようさん。これまたバッサリいったな、後ろ姿で判断するの中々難しかったで」

「でも分かってくれたんですね!」

「日吉と2人で登校する子なんて自分以外おらへんやろ」



ここ最近、なんだかグンと身長が伸びたような気がする忍足先輩がいた。先輩の言葉に若はちょっとムッとしたような顔をしたけど、実際若と仲良しな女の子って他にいないもんなぁ。私の場合もう女の子っていう領域では無いんだろうけど、先輩からすればそう感じられるのも当たり前だ。



「すっきりしたな。似合っとるやん」

「ありがとうございますー!若なんて何も言ってくれないんですよ!」

「堪忍したって、日吉はシャイやから」

「誰がですか」



そうして忍足先輩も加えて、3人横並びでまたテクテクと歩き始める。先輩は若の事をからかうのが好きなのか、でも若はからかわれるのが嫌いだから私の頭上ではずっと静かな言い合いが飛び交っていた。そう、静かなんです。2人の性格上声を荒げてどうこうとかじゃないから、淡々と言い合ってるんです。

そんな会話を笑いながら聞いていると、学校にはすぐに着いた。2年と3年では階が違うから階段を上ってから先輩とお別れして、私達はまずクラス発表の掲示板に向かう。



「また同じクラスだったら良いね」

「どうだかな」

「とか言っちゃって!」

「あれっ、日吉と…萌乃ちゃん!?」



すると次は前から長太郎と樺ちゃんが歩いて来て、案の定長太郎は私の髪を見るなり「どうしたの!?」と両肩を持って詰め寄って来た。びっくりしてほしかったけど、ここまでガクンガクン揺さぶられるとは想定外です!喋るに喋れなくて困っていれば、樺ちゃんがやんわりと離してくれた。ありがとう樺ちゃん。



「心機一転!どうかな!」

「うん、可愛いよ!萌乃ちゃん顔小さいからショートも似合うね!」

「ウス」

「やだ2人共、照れるー!」

「体は最近太って来たけどな」

「減らず口を!」



一向に褒めてくれない若に痺れを切らして、ほっぺをぎゅーっと引き伸ばしてやれば、その瞬間光の速さで頭を叩かれた。いつまで私はこんな仕打ちを受けるんでしょう。まぁいいや。



「ていうか2人共、もう掲示板見て来たの?」

「うん、残念だけど俺達皆バラバラだったよ」

「ええええぇえー!?」



前方に群がってる生徒達を見ながら問いかければ、なんとも出鼻挫かれた感満載な答えが返って来た。そんなぁ…確かに氷帝は人数が多いから、1年で若と一緒になれただけでも奇跡だったけど…皆いないなんて悲しすぎるよ。その考えが顔に出過ぎたのか、長太郎が困ったように笑いながら頭をポンポン、と撫でてくれた。



「こんなに人数多いんだから仕方ないよ。来年は同じになれれば良いね」

「うん…」

「で、俺と萌乃は何組だ」



樺ちゃんが教えてくれたクラスを聞いて、チャイムが鳴るギリギリまで廊下で話し込んだ後、私達はそれぞれの教室に散った。長太郎はC組、樺ちゃんはB組、若はF組、私はH組。見事にバラバラだ。2年生、ちょっと落ち込んだ気分のままスタート。


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