「いらっしゃい!お久しぶりですー!やっほー若ー!」

「うるさい」



そんなこんなでチコの服も買って貰ってから無事帰宅し、午後6時。今日は久々に日吉家と牧田家が一緒にご飯を食べる日で、到着した日吉家を迎えに玄関まで出ると早速若は鬱陶しそうな顔を向けて来た。だから飛び付いてやれば瞬時に顔面を片手で抑えられる。流石にこの扱いは酷いんじゃないかなぁ。



「もう若ったら、すっかり思春期に入っちゃったわね。ごめんなさいね萌乃ちゃん」

「いえ、慣れてます!代わりにお兄ちゃん!」

「俺は代用品か。まぁいいけど、よーしよし」



去年成人した若のお兄ちゃんは、顔は若に似てるけど中身はまるで違う。昔から一緒にいるから私もお兄ちゃんって呼んでる(ちなみに長太郎のお姉ちゃんの事はお姉ちゃん)。お兄ちゃんは飛び付く私の頭をワシャワシャと撫でてくれて、なんだかチコになった気分を味わえた!

とまぁ玄関先で待たせるのもアレなので、若パパママ、お兄ちゃん、若を連れて夜ご飯が用意されているリビングに向かう。今日は若ジジババはいないみたいだ。若ババは一昨年からちょっとボケが始まりつつあって、いっつも私の事をコノミちゃんって呼ぶ。誰だろうコノミちゃん。



「最近部活どう?」

「別に変わらない」

「そういえば10月弓道部新人戦あるの!テニス部はいつ?」

「10月だ。多分ほとんどの部活同じ時期だろ」

「そっかー、楽しみだなぁ。あ、そういえばね最近ね」



大人は大人で話し始めたから、私は隣に座っている若に最近あった事を事細かに伝える。そのうち男性陣がビール、女性陣がワインを飲み始めて、それでも私達はまだまだご飯を食べ続ける。

新人戦。幸いメンバーにはこのままいけば選ばれると思うし、大会に出るのも部活では初めてだけど、小学生の頃は毎年出てたからそこまで緊張はしない、はず。でもなんやかんやで新人戦という慣れない響きがちょっと色々不安にさせる。気にしてても仕方ないんだけど!



「長太郎も樺ちゃんも元気?最近会ってない〜」

「相変わらずだ」

「ていうかなんで若4人のLINEグループに招待したのに入ってくれないの!」

「うるさくなるのが目に見えてるだろ。面倒臭い」

「駄目ー。はい若の携帯ゲットー」

「殴り飛ばすぞ」



箸を進める手は止めずに暴れ出した私達を見て、大人は「あらあら」と呑気に見ている。私はと言えば若の古武術の技を仕掛けられて瀕死ぎみだ、一応グループに入れる事は成功したけど代償がこれじゃあちょっとあんまり!と思っていたら見兼ねたお兄ちゃんが助けてくれて、ふう、と一息。



「若ってば怒りっぽいんだからぁ」

「人の携帯勝手に盗る奴が悪い」

「でもこれで皆一緒に連絡取れるね!」

「別に俺は使わない」

「またまたー」

「ていうかお前、そんな事してる暇があるなら宿題は終わったんだろうな」

「えっ」



そこで思いも寄らない質問が来てしばし沈黙。特に返す言葉も思いつかなかったのでそのまま何事も無かったように筑前煮にお箸を伸ばすと、瞬時にその手を叩かれた。い、痛い。涙目で睨みつけてみても倍の睨みが返って来て、私の中の危険信号がクルクルと赤色で回り始めた。うおおおぉ怖い若!



「お前夏休み終わるまで後1週間切ってんだぞ!まさか何1つやってない訳じゃないだろうな」

「…てへ」

「可愛くねえ」

「こら若、さっきから女の子の頭叩きすぎだぞ!」

「昔はずっと萌乃ちゃんの前に立って守ってあげてたのに、今じゃこれだものねえ。男の子だわぁ」

「父さんと母さんは黙ってて下さい」



そんな感じで密かにバレないか危惧していた事はあっさりバレ、明日から部活帰りは若(と多分、長太郎と樺ちゃんも)と勉強会をする事になった。そういえば前のテストの時は私が必死に頼み込んでやっと一緒に勉強してくれたのに、なんで今回は若から言ってきたんだろう?と思って質問してみると、「前のテストでいかにお前がヤバいのか思い知らされたからだ」めちゃくちゃ直球!


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