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暑い、あつい、アツイ。暑い暑い暑い暑い暑い。

何回も頭の中で同じ言葉を繰り返しているうちにアツイってなんだっけ?てなっちゃうこの現象の事なんて言うんだっけ?と半分溶けた脳味噌でくだらない事を考える。全く、暑さを凌ぐ為にハーゲンダッツを買いにコンビニに出向いたのになんでこんな感じなっちゃってるの。太陽の馬鹿。



「クウーン」

「そうだよねーチコも暑いよねー、付き合わせてごめんねー」



1人じゃつまんないから無理矢理引っ張って来たチコも、ふざけんなよ萌乃!みたいな顔で見てくる。しまいには道路に寝ころんじゃったから仕方なく持ち上げるけど、チコのもふもふがよけいに体を暖めてもう灼熱状態だ。でも元は私のせいだから仕方ない。

前から歩いてくる人も皆だるそうに背中を丸めて歩いていて、ミニ扇風機とかうちわを持ってる人までいる。元気なのなんて時々走り去っていく近所のちびっこくらいだ。ほら、今コンビニから出てきたお兄さん2人だってあまりの暑さにイライラしてアイス取り合ってるし、って、あれ?



「せやからガリガリ君一択言うたやろ。何が何でも渡さへんで」

「考えてみればこんな暑い日にクリーム系なんか食いたかないっちゅーねん!一口くらい分けたってええやろ!」

「自業自得や」



ハーゲンダッツを買いに来た私の立場は何処へ、じゃなくって。



「忍足せんぱーい」

「ん?あ」



2人組のお兄さんのうちの1人、ガリガリ君をちょっとドヤ顔で食べてるその人は、紛れも無く忍足先輩だった。少し見ない間に肌が焼けていて、髪もひとくくりにしているせいか最初は気付かなかったけど、この低音ボイスはどう考えても忍足先輩だ。そして先輩は私の存在に気付くなり一緒にいた人を置き去りにして、チコの頭を一度撫でてから改めて私に向き直った。とりあえずぺこり、とお辞儀をしておく。



「犬が2匹おる思ったら自分やったんか」

「それってツッコんでいいんでしょうか」

「むしろツッコむポイントやで」



という他愛も無い話をしていると置き去りにされた人は大きな足音を立てながら近付いてきて、まず忍足先輩につっかかり、その後私とチコの顔を見比べるとちょっと驚いた顔になった。でもそれはすぐにニカッと人当たりの良い笑顔に変わって、私もニコッと口元を緩めてみる。



「なんやなんや犬が2匹おるやん!」

「なんでやねん!」

「その調子やで牧田ちゃん」



ツッコミ成功!



「ちゅーかこの犬めっちゃ大福に似とるなぁ」

「だいふく?」

「あぁ、そらそーやろ。だって大福とこの犬、えーっと、名前なんやったっけ」

「チコです!」

「せや、チコ。大福とチコ兄弟やもん」

「えぇ!?」



そこで突如言われた血縁関係に金髪の人はかなりびっくりしてるけど、話の流れがいまいち読めない私は頭の上に?が飛び交うだけだ。大福、って名前?チコと兄弟?

でもそこまで考えて、そういえば忍足先輩はあの時岳人先輩にもらった犬を従兄弟にあげると言っていたのを思い出した。つまり、この人は忍足先輩の従兄弟?



「ほんまかーチコお前大福の兄弟なんかー!!」

「あ、チコメスなんですー」

「どっちでもええわ!ちょ、抱かせてくれへん?」

「どうぞー」



鼻息を荒くしてる金髪さんにチコを預けて、忍足先輩にそっと「従兄弟さんですか?」と問いかけてみる。すると先輩は苦笑しながら「恥ずかしながら」と答えた。へえ、この人が先輩の従兄弟かぁ。



「全く似てないですね」

「逆に似てる言われても反応に困るわ」

「チコー自分もかわええなー!いつか大福と再会させたるからなー!」

「ワンッ!」



そうしてチコと戯れる事数十分(結構長い!)、金髪さんは私の存在をようやく思い出したのか軽く自己紹介をしてくれた。「今度また会おな!」完全にチコ目当てなのが目に見えるけど、悪い人ではないし私も大福に会いたいから勿論頷いておく。謙也さん、よし名前覚えた!



「牧田ちゃん何処行くとこだったん?」

「コンビニでハーゲンダッツを買おうかと。でも、やっぱりガリガリ君にします」

「それが正解や」



W忍足さんと3人で散歩、中々オツですなぁ。


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