「いけいけ宍戸さぁーーん!!!」



大声で叫ぶ私と長太郎の事を、周りの人は笑ったりドン引きしたり色々な表情で見ている。でも私達にそんなのは全く関係無く、「恥ずかしいからやめろ!」としきり止めてくる若を余所目に叫びまくった。

7月某日。関東大会をいよいよ来週に控えた今日、氷帝では校内水泳大会が行われている。



「いやったぁあああぁ宍戸さん決勝進出うぅううう!!!」

「その勢いです宍戸さぁああぁん!!」

「お前らいい加減に…もう無駄か」



隣で若が頭を押さえて溜息を吐いたのも構わず、宍戸さんの決勝進出決定に私達は手を取り合ってはしゃいだ。ちなみにこの水泳大会は参加希望者だけが出場するのだけれど、中々出場者が多いのを見る限り人気の行事っぽい。最初聞いた時は水泳かぁー、って感じだったのが嘘みたいだ。

ちなみにテニス部からは宍戸さん、滝先輩、岳人先輩、ジロー先輩が出場している。跡部先輩はちょうどゴールの所に椅子を置いて座っていて、樺ちゃんはその横で日傘を差している。そんな姿もサマになっちゃうんだから凄い。忍足先輩はあんまり興味無いのか、パッと見渡す限り私の視界には入らなかった。

そうして決勝に入る前に、まず敗者復活戦が始まった。これには滝先輩が出る事になっている。岳人先輩は最初の方で負けちゃって、ジロー先輩も去年は背泳ぎで準優勝したのに今回は睡魔に負けて不戦敗。勿体無いなぁ。

位置について!審判の声が響く。正直宍戸さんの時ほど熱狂的じゃないけど、それでも私達は滝せんぱーい!とエールを送る。



「滝先輩細いね〜羨ましいなぁ」

「お前最近太ったからな」

「筋肉がついたと言ってくれたまえ!」



6人中2位という好スタートをきった先輩を見ていると若はそんな事を言ってきたので、意地になって袖を捲り二の腕の筋肉を強調する。そうしていると急に周りががやがやし始めて、私達3人はすぐさまプールに視線を戻した。



「え、あ、あれ?滝先輩!?」

「ど、どうしたんだろう!?」

「恐らくネットが絡まったんだろう」



するとそこには、なんとそれまで華麗に泳いでいた先輩が苦しそうにもがいている姿があった。若の推測を聞いてよーく目を凝らしてみると、確かに先輩はネットが足に絡み付いて焦っているようだった。そんな姿を見ちゃえば私達は更に焦る。Tシャツを勢いよく脱ぎ捨てた長太郎に続いて私も真似しようとしたら、「なんでそこでお前が出てくるんだよ」って若に肩を抑えられた。代わりに若がTシャツに手をかけながらズイッと前に出る。

でもその前に「萩之介!」と大きな声で先輩の名前を誰かが呼んだのが耳に入って、その声の持ち主を探す前にプールにはバッシャーン!と盛大な水しぶきが起こった。



「し、宍戸さん…」

「なんでお前らが半泣きなんだよ」



滝先輩を助けに行ったのは宍戸さんで、その男らしい姿にまた私と長太郎が感動する。するとついに若は頭をバシンと叩いてきた。今さっきまで自分だって焦ってたくせに、というのは流石に言わない。私も凄く焦ったから。

何が原因で引っかかっちゃったかは聞いてないからよくわかんない。でも、滝先輩が助かってとりあえず良かったと心底安心した。その後の決勝でも宍戸さんは優勝を勝ち取り、多分今日で宍戸さんのファンが増えたのは言うまでもないと思う!


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