私の家は金持ちだ。でもそれは私が産まれてからの話であって、元は一般家庭よりむしろ下の部類に入るくらいだったらしい。だからといって両親達は、別にその生活が嫌で嫌で仕方ないという訳ではなかった。ただ、父のひょんな所から思いついた考えがたまたま会社で起用され、それがたまたま爆発的に世間様に受けた。ただそれだけなのだ。

父はよく言う。人生は、いつ何処で何が起こるかだなんて誰にもわからない。お前には兎に角悔いのない人生を送って欲しい。



「若ー、お腹空いたよー」

「俺はテニス部の見学に行く」

「えぇ!?長太郎と樺ちゃんは!?」

「あいつらもだ」

「えぇええぇー!?私置いてきぼり!?」

「うるさい、お前だって弓道部入るんだろ」

「まぁその予定なんだけどー」



だから、氷帝学園受けてっ!

語尾にハートが付く勢いでそう言った父の事は、数年経った今でもよく覚えている。父は、根本的に頭が弱い私の事を心配し、本当にダメになってしまう前にと、此処氷帝学園の受験を幼稚舎の頃に受けさせた。まぁ、今思えばあれは正解だったと思う。数学やら英語やらが取り入れられた受験科目を乗り越えられる気なんて全くしないし、エスカレーター式の学校なんて入ってしまえばこっちのもんだ。成績が悪くてもなんとかなる。だから、外部入学では無く最初から在籍してて良かった。

そんな両親に育てられたものだから、悪知恵を思いつく速さは誰よりも自信がある!これを言えば若は、それは自慢出来る事じゃない、って呆れるけど、長太郎と樺ちゃんは優しく笑ってくれるから別にいいんだ。

楽しい事が大好きだ。体を動かす事が好きだ。美味しいものが大好きだ。人と関わる事が好きだ。イタズラするのが好きだ。(でも勉強は嫌い)



「行くぞ萌乃」

「何処行くのー?」

「馬鹿、次移動教室だろ」

「あぁ、そっか」



こんないつまで経っても子供のような私も、いよいよ中学生になりました。入学式を終えてから3日目の今日、そろそろ本格的に、新しい生活がスタートしそうです。


fuss !


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