そうして放課後になり、私は言われた通り校門前で岳人先輩が来るのを待っていた。方向が同じであれば若達とも一緒に帰りたいけど、なんせ先輩の家が何処にあるか知らないのでなんとも言えない。というか、先輩の家に行くのかすらよくわからない。

サッカー部や野球部が帰って行くのを見送った所で、コートの方からピンク色の頭の人が見えた。岳人先輩は見つけやすくて助かるけど、よく目を凝らしてみると先輩は1人じゃないみたいだ。1、2、3、4…



「って、皆さんお揃いじゃないですか!」

「何馬鹿な事言ってんだ」

「いてっ」



何人いるのかなぁと思って数えようと思ったのも束の間、近付いて見ればその顔ぶれは全員見覚えがあった。私の呟きに反応した若はすぐにつっこみをいれてきて、急に来た拳に頭を抑える。叩かなくてもいいのにー。



「よっ、萌乃!待たせたな!」

「萌乃ちゃん、今日は向日先輩の家に犬見に行くんでしょ?」

「その事なんですけど、どういう事ですか?」



そこで長太郎がそう言って来たのをきっかけに、早速岳人先輩にあの言葉の意味を尋ねてみる。で、まぁ要約するとあれだ、岳人先輩の家の近くに子犬達が捨てられていたらしく、その子達の里親を探してると。このご時世に子犬達を置き去りにするなんて、酷い事をする人がいるんだなぁ…。親が許可してくれるかは別として、その話を聞いた私は居てもたってもいられず、結局二つ返事で岳人先輩の家に行く事になった。



「引き取られねェ分は俺が引き取ってやる。誰にでも適当に譲ったりすんじゃねーぞ」

「分かってるって!跡部さっきからそれしか言ってねーぞ!」

「悪ィな、俺んちもうユズいるから無理だわ」

「宍戸さん犬飼ってるんですか?」

「おう、ちなみにビーグルな。写真見るか?」

「見ます!!」



跡部先輩は岳人先輩にしっかり忠告してから、校門前に迎えに来ていた車に乗り込んで帰って行った。樺ちゃんはその姿を最後まで見送ってから、私達の輪に静かに入った。

それから歩いているといつもの分岐点に差し掛かった。岳人先輩の家は私とは逆方向みたいなので、いつもは同じ方向の若、長太郎、樺ちゃんとはここでバイバイだ。



「あれ、忍足先輩も確か俺達と方向一緒ですよね?」

「侑士も俺んちに来るんだよ!」

「あ、そうなんですか。なんか意外ッスね。じゃあ先輩達、また明日!」



元気良く手を振る長太郎、深くお辞儀をする樺ちゃん、軽く頭を下げるだけの若。そんなバラバラな3人の姿を見ていると、私はそこである事に気付いた。

…忍足先輩も確か俺達と方向一緒ですよね?

ちょっと待って、イコールそれって私と忍足先輩も同じ方向という事を表してるよね。後の岳人先輩、ジロー先輩、宍戸さん、滝先輩は皆違う方向。…私、帰り道忍足先輩と2人になるって事?



「(…どうしよう)」



一瞬にしてテンパッてしまった私に先輩達は気付くはずが無く、相変わらず仲良さげに話しながら歩いている。その中でも忍足先輩は一歩引いた所から皆を見ていて、そしてその表情は少し怖かった。…どうしよーーー!!!


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