「それにしても跡部は凄いね、どんな子でも受け入れるんだ」

「アーン?ファンの女を大切するのは当たり前だろーが」

「へぇ、俺には到底真似出来へんわ」

「そういうお前は露骨な態度出し過ぎなんだよ」



食堂から帰っている途中、滝が投げかけた言葉にさも当たり前のようにそう答えた跡部を、忍足は非難するような視線と共に突っぱねた。そんな忍足に勿論跡部は反論するが、そもそもの考え方が違うのではどうしようもない。



「忍足、そんな事言わなくても〜。あの子、ちょっと変だけど普通にE子だよ〜」

「それって褒めてんのかぁ?」

「まぁ確かに、昨日話した時もさっきも、別に害があるようには見えなかったぜ?」



去年彼らが入学しテニス部に入り、更には跡部が部長になってからは、氷帝の中でテニス部は非常に目立つ存在となった。その事を彼らは各々自覚しているので、時々近寄ってくる下心満載な女子に対しては冷たく跳ね返すが、それ以外の女子には特に嫌悪感を抱く事も無く、むしろ仲良く喋る事も珍しくなかった。が、忍足に至ってはそれすらも無く、とことん女子と距離を置いているのは全員が知っている。



「ほんと侑士って女嫌いだよなー」

「岳人だって別にあの子と話しとらんかったやん」

「俺?俺は話しかけられたら普通に話すぜ!そういうもんじゃねーの?」



とはいえ、忍足の顔立ちと中学生とは思えない雰囲気から、今までどれだけ女子に苦労してきたのかはなんとなく窺える。彼は跡部のように割り切れるタイプでもなければ、その他の者のように女友達を作れるタイプでもない。そうなるとやはり、何か面倒事が起こる前に女子とは関わらないようにするのが最適なのかもしれない。

冷徹ともいえるその思考に、跡部はどうにかならないものかと眉根を顰め考えたが、忍足が芥川と共に自分の教室に入っていた事によりその思考は遮断された。それから向日も入り、残った滝が苦笑しながら跡部の顔を見つめる。



「そんなに思いつめなくても。あいつはあれで上手くやってるんだし、それでいいんじゃない?」

「とても上手くやってるようには見えないがな。何を意地になってやがるんだ、あいつは」

「ほんと跡部は過保護というか優しいというか」



手下を想いな王様を見て滝は、これからどうなる事やら、と1人心の中で呟いた。


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