「っ、あー、頭いーたーいー」

「どんだけ飲んで来たんだよ。お前そんな酒強くないだろ」

「だってー、上司が飲めっていうからー」

「口回ってないし。つーか上司って男?」

「うん、男、私狙われてるみたい」

「殺しに行っていい?」

「いいよー、ってダメダメ、精市君犯罪者になっちゃうー」

「お前仕事やめれば?」

「家計が成り立たなくなっちゃうでしょー」

「いや俺の稼ぎだけで充分だろ」

「だーめ、3人になるんだからーお金はあるに越したことないしー!」

「…は?3人?」

「うん、此処にいるのー。このお腹にー」

「…は?」

「子供が出来たんですよ、精市く」

「なんでもっと早く言わないんだよそれ、つーかなんで妊娠中にそんな酔い潰れるほど飲んで来てる訳?今すぐ産休取れ。明日すぐに先生に話聞きに行って、いやつーか何ヶ月目?最近太って来たなと思ってたけどもしかしてもう膨らみ始めてる訳?待ってお前本当にあり得ないんだけど」

「不安だったんだよー、これでもー」

「…不安?」

「不安で、嬉しくて、でも不安で、ねぇ精市君」

「何」

「愛してるよ」




怒鳴りつけてやりたいほど怒ってやりたい気持ちは山々だった。でも、こいつがこんなにも真剣な表情でそんな言葉を言って来たのは去年婚約した日以来初めてで、そしてその言葉に見事に俺はドツボにハマってしまった。締まりがなく情けない顔をするこいつに無理矢理キスをすれば口内には酒特有の苦い味が広がったけど、それすらも愛しく感じてしまった自分が盲目すぎて笑えた。
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