重い資料運びをしていたらさりげなく手伝ってくれた




「うおっ、何やっとんねんお前!」

「授業中寝てたら雑用任された。最悪」

「自業自得やないかい」

「謙也手伝ってー」

「俺これから部活やねん、白石もう行ってもうたし俺もはよ行かなあかんからなーちゅーことでファイト!」

「最悪!」



スピードスターという別称にぴったりなスピードで、謙也は玄関の方に向かって爆走して行ってしまった。きっと謙也の事だから、時間があればなんだかんだ文句は言いつつも手伝ってくれただろう。部活の邪魔にはなりたくない、だから今の謙也の判断には納得しなきゃいけないのに、それでもやっぱり寂しいと思うのは私のワガママなのか。私が特別だったら、謙也は時間を割いて手伝ってくれたのだろうか。



「(…最悪なのは私の方だー)」



ズシリ、と重い教材を持ち上げ、窓の外を見ながら目を細める。誰にでも平等に優しい謙也を好きになった時点でこういう不満が起こる事は覚悟しておくべきだったのに、どうやら私の覚悟は甘かったらしい。…キモイ!自分キモすぎる!

そう、今すぐに教材を投げ出して頭を抱えたい衝動に駆られた時、ふいについさっき聞いた足音が耳に入って来た。うっそ、嘘でしょ。



「やっぱ手伝う!」



バッ!とまるで強盗のように私の荷物を横取りしていった謙也は、校内にも関わらずテニスシューズを履いていた。何あの人、どんだけ急いでんの。それ職員室に持ってくやつなのに、そんな靴履いてたら怒られるじゃん馬鹿じゃん。

でも、通りすがった時に謙也の横顔を一瞬見た時、それは真っ赤に染まっていたから、とりあえずは満足する事にしてみた。



thanks/確かに恋だった
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