切原赤也、高校1年、春。

今日から俺は晴れて高等部に進学する。入学式にふさわしい桜、晴天、心地良い風、真新しい制服、そしてテニスバッグ。全てが俺を舞い上がらせるには充分な要素を持っていて、テニス部に向かう足取りもそれはそれは軽い。もうスキップしちまいそうな勢い。



「こんちはーッス!!」

「お、赤也来た来たー。新入生1番乗りだぜぃ」

「ノックもせずに開けるとはたるんどるわ!まずは先輩達に名を名乗れ!」

「いいって真田、お前達の代の子は充分知ってるからさ」



バーンッ!と遠慮なしに部室のドアを開ければ、そこにはいつもの先輩達と知らない先輩達がいた。中学の頃は挑発的な態度ばっか取ってた俺だけど、んま一応高校生だし?ここは大人しくちゃんと頭を下げて挨拶しておく。強い弱いの前に先輩は先輩だから、って、



「───晴香先輩っ!!」



この人が教えてくれたから。



「切原君、痛い」

「もぉおおーーまた晴香先輩にサポートしてもらえるなんて俺幸せ!死んでも良い!」

「ふふ、じゃあ死んじゃえば?」



…と、その前に。

一気に室内の雰囲気が氷点下まで下がったのを感じた俺は、即座に晴香先輩から離れその声を発した人物に顔を向けた。…うお、やべー。



「ブ、ブチョ、すんませんッス」

「いいやー?俺が言える権利はちっともないし」

「精市、落ち着け。それに赤也、精市はまだ部長ではない」

「そうだよ切原君、一応まだ俺が部長だから、ちょっとその呼び方紛らわしいから勘弁して」



どす黒い笑顔を浮かべている幸村ブチョを柳先輩が抑えてくれたところで、いつの間に背後に立っていたのか、肩に手を置かれながら今の部長からそう言われた。人懐こそうな優しい笑顔を浮かべるその部長に、軽く頭を下げて挨拶する。



「全く、身長ばっか伸びてなんも変わらんのう」

「へへっ、もう仁王先輩にも追い付きますよー!てか先輩髪切りました!?イケメン!」

「照れるなり」

「赤也、もうすぐ部活始まるから着替えろよ」

「そうですね。1年生はまだ部室は使えないので、案内しますよ」

「行くぞ赤也!」

「───はいっ!!」



懐かしい光景、いつもの光景。本当に、1年間頑張って来た甲斐があった。俺の代では先輩達に優勝もプレゼント出来たし、んで今年からはまた先輩達とテニス出来るし、俺多分今が1番幸せ!悩みとかなんも無い!

…あ、でも、悩みまでいかないけど気になる事はある。



「幸村君、目がかゆい」

「ゴミでも入った?見てやるからおいで」



この2人、どうなってるんだろうなぁ。



狙ったのは左胸

 1/3 

bkm main home
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -