「田代、少しはマリカー上達したのか?あん時はマジで激ダサだったぜ」 「ゲーム自体持ってないから中々練習する機会が無いんだ。今度また景吾君の家でやろう」 「おっそれいいじゃん!合宿終わったらすぐ行こーぜー!」 先程の騒動を終え、彼らはもう就寝時間が過ぎているにも関わらず、ロビーでいつまでもグダグダと話していた。この場面を真田などが見たら喝が入る事間違いなしだろうが、彼は今跡部、白石と共に明日の練習メニューについて違う部屋で話し合っている真っ最中だ。ゆえに此処には居ない。本来それはもっと早い時間に行われる予定だったのだが、幸村が倒れるという緊急事態が起こった為この時間まで食い込んだのである。 「で、ブンはどう思う」 「んぁ?どうって…幸村君と田代の事?」 「当たり前じゃ」 そんな中仁王は、宍戸と向日と楽しそうに会話をしている晴香を遠目で見ながら、隣で夜食をバクバクと頬張っている丸井に声を掛けた。丸井はその言葉に一度食べる手を止め、食べ物を全て喉に流し込んだ。 「ふっつーに見たら脈アリだと思うんだけどなー…なんせ相手は田代だしよぃ」 「やっぱそこが気になるのうー」 「っつーか田代って恋すらした事ないだろぃ?もし好きだったとしても気付かないんじゃね?」 「俺もそう思うぜよ。もうもどかしくてたまらん」 過去に2年間晴香とクラスが同じで、尚かつ部活でもずっと2人の様子を見て来た彼らにとって、やはりそれは悩みの種になるのか。彼らはうーん、と腕を組みながら頭を悩ませた。 「田代と精市の事で悩んでいる確率97%」 「うおっ!?」 「おたくらの部長なんでさっさと晴香さんに言わへんのですか。見てるこっちがむず痒いですわ」 「柳に財前とはどういう組み合わせじゃ」 その時、柳と財前が背後から突如顔を出し、案の定2人は驚いたように声を上げた。ちなみに、いつも彼らの後を着いて来る切原は今は遠山とのじゃれあいに夢中でそれどころではないらしい。 「精市の場合、自覚するまでにもかなりの時間を要したからな。此処まで引っ張る事も何となく予想は出来ていた」 「まさかこのままずっと何もなし、とかは無いっすよね?」 「それはねぇだろぃ!幸村君なめんな!」 「この先どうなるかのうー」 そこまで話すと4人の視線は自然と晴香の方へ向いたが、当の本人はまるでその視線に気付いておらず、ただただ他の者との会話を楽しんでいた。そんな彼女の様子を見て、4人は再び視線を合わせ困ったように笑う。 「もうやだー!助けて下さい先輩達、こいつマジでしつこいっす!」 「赤也が赤目になってくれたらええ話やん!赤目の赤也ごっつ強いんやもん、その強さワイ見たいー!」 「何か、大変そうだな四天宝寺も」 「金ちゃんの暴走は誰にも止められへんっちゅー話や」 そこに切原、遠山、ジャッカル、謙也が近付いてきて、幸村と晴香についての話題は一度お開きとなった。 ついでにそれから数分後には話し合いを終えた真田達も戻って来て、案の定彼らは真田の喝を受け、ようやく渋々ながらも自室へ戻って行った。 「田代、幸村の看病よろしく頼むぞ」 「そんなの当たり前だろう」 しかし、背後から聞こえた真田と晴香の会話を耳にするなり、4人がまた目を合わせ楽しそうに微笑んだのは言うまでも無い。 |