「ちょお晴香、自分ホームラン何回目やねん!」

「ほんまにテニスの素質はあらへんのやなぁ」

「それは俺も同感だぜぃ」

「うるさい」



しばらくしてそうめんが終わり、次に私達は跡部家のテニスコートを使ってテニスをし始めた。マネージャーはやっていてもテニスなんて打ち合いもまともにした事が無いので、此処は物は試しだと思った私は、W忍足を相手に丸井君とペアを組んで打ち合いをやってみた。が、結果は見ての通りだ。真田君や樺地君や銀さんなんかは力いっぱい打ってもコート内に入るのになんで私だけ、と不満が込み上げてくる。



「ただがむしゃらに打てば良いってもんじゃないんすよ!もっとコントロールを重視して下さいっす!」

「そもそもセンスの問題だとも思うが」

「シッ!それ言っちゃ駄目だよ日吉!」

「ウス」

「まぁ、ギャップっちゅー事でえぇんやないすか」



何故か未だ一緒に固まっている2年生達の言葉は聞かなかった事にし、次はユウジと小春を相手に千里とペアを組んで打ち合いをする事になった。正直1番当たりたくなかった2人だが、もうこうなればヤケだ。体力だけは有り余っているし何でもやってやろう。



「晴香、まずラケットの持ち方が違うばい」

「それじゃあ最初からホームラン打つ気満々じゃないのっ!」

「意外と天然なやっちゃなぁ!」



千里が実際に手を添えて持ち方を教えてくれてる所に、小春とユウジの茶々入れが聞こえてきて、思わず口を尖らせ不機嫌顔になる。この試合、絶対に勝ってやる。

なんていう目標は、千里がほとんど(というか全部)頑張ってくれたおかげで成し遂げる事が出来たが、結局私はボールが来る度にホームランを打つ事しか出来なかった。もう決めた、テニスなんかしない。



「晴香ーっ、こっちでキャッチボールしようぜぃ!」

「テニスはもう良いのか」

「まぁまぁ、たまにはいいだろ!」



そう不貞腐れていた時、コートの外から岳人と宍戸君のそんな声がした。だから言われるがままにコートから出てそちらに行くと、そこには2人に加え他の人も何人かいた。後、



「ワンワンッ!」

「ほらマルガレーテ、取って来ーい!」

「みそっ子、それは流石に遠くに投げすぎじゃ」



犬も、1匹。

以前景吾君の家に来た時は見なかったが、どうやら彼はこの犬を飼っているらしい。毛がだらーんと長くて体も大きいその犬の犬種を私は知らないが、柳君なら知ってそうなので近くにいるついでに問いかけてみる事にした。その結果、マルガレーテはアフガンハウンド種という事が分かった。初めて聞いた。



「田代気を付けろぃ、あの犬超怖いぜぃ!さっきまたがろうとしたら噛みついて来た!」

「それは丸井君の体重に耐え切れなかったからだろう」

「ははっ、違いねーな!」

「おいコラ笑ってんじゃねーよ」



私の言葉に反応した宍戸君と目を合わせ笑えば、丸井君は「最近痩せて来たと思うんだけどなぁ」と言いながら自分の腹をつまみだした。その様子を見て更におかしくなる。



「あとべーっ!俺エリザベードに乗りたEー!」

「いいぜ、着いて来い」

「エリザベード?」

「馬らしいで、馬。全く動物園かて此処は」



ジローが突如言い放った言葉に再び首を傾げていると、いつの間に隣に来たのか蔵ノ介が答えてくれた。馬…流石景吾君だ、と訳も分からず無駄に感心する。



「お前も乗って来たら」



馬、という単語に反応して走って行った皆の後ろ姿を見ていると、ふいに幸村君が話しかけて来た。彼が来たと同時に何処かへ行ってしまった蔵ノ介の行動が気になったが、まぁ何かあったんだろうと勝手に解釈し、幸村君に向き直る。実はさっき一緒に転んでしまった時から彼はなんだかよそよそしかったから、話しかけてくれた、という想いが私の中で出て来た。



「幸村君は行かないのか?」

「跡部が飼ってる馬って暴れ馬っぽいじゃん。落ちたら嫌だし」

「じゃあ試してみよう」

「は?って、え、ちょ」



だから、少し浮かれてしまったんだろう。私は幸村君の腕を引っ張って、嫌がる彼を連れて無理矢理エリザベードの所へ行き、更には一緒に乗馬した。が、何を思ったのか景吾君は周りの人達と企み顔で何かを話し合った後、途端に英語?で何かを叫び出した(急な事で聞き取れなかったが)。最初は何事かと思ったものの、すぐにその意図は理解出来た。馬が暴れ出したのである。

突然の事に油断していた私と幸村君は、当たり前のように馬から落ちた。ちゃんと防具も付けていたしエリザベードはそこまで大きな馬では無いから特別大事には至らなかったが、見事に、本当に見事に落ちた。



「大丈夫?怪我無い?痛くない?」

「幸村君が下敷きになってるじゃないか、私の台詞だそれは」

「お前に怪我が無いかって聞いてんの」

「…無いが」

「…何やってんだろね、俺達」



でも、落ちる直前に幸村君が私の下敷きになってくれたから痛みは全くといって良い程こなかった。思いっ切り覆い被さってしまったので一瞬心配になったが、彼は自分の体よりも私の事を心配した。怪我をする高さでも無いというのに、両肩を掴んで詰め寄ってくるその顔は真剣そのもので、思わず圧倒された。

まぁそれも束の間で、無事がわかるなり幸村君は眉を下げて笑いながらそう言った。それにつられるように私も笑って、その後は久々に声を上げて笑った。



「わぁー、晴香さんがあんなに笑った顔初めて見たよ俺!」

「俺だって滅多にねーよ。ブチョずるーい!」

「…それにしても幸村さんはわかりやすいな」

「お前んとこの跡部さんも対外わかりやすいで。見てみぃ、あの我が子を見守るような眼差し。樺地、お前着いて行くのがあんな親馬鹿っぽい人でえぇんか」

「ウス」



相変わらず一緒にいる2年生達は私達を見て何か言っていたようだが、そんな事も気にならないくらい、なんだか凄く楽しかった。理由は、分からない。
 3/3 

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