「え?」

「これは驚いたよ。千石、君も此処で働いてるんだね」



私達の輪に入って来たのは、今まで見た事が無いオレンジ頭のイケメンだった。彼は私の顔を見るなり一瞬驚いたような声を上げたけど、不二に話しかけられるなりすぐに顔色を戻し「そうなんだよね」と返事をした。なんだなんだ。



「ほら、俺大学入る時浪人したじゃない?だから切原君と同期なんだ」

「入社式で会った時は驚いたっすよー!まさか千石さんが一緒なんて!」



これだけ明るい頭だったら目立ちそうでも、なんせ此処はアニメの世界だ。社会人でも奇抜な色の頭をしてる人なんて腐る程いる。となれば入社式で私が気付かないのも当たり前だ。最初は見慣れなかったそれも、今となっては何色でも驚かないのだから怖い。ってのはどうでもよくて、という事は一応千石さんは私の後輩に当たる訳か。



「改めてよろしくお願いします、先輩達」

「そんな、今更水臭いやないかい。やめてや」

「豊崎、紹介する。昔部活仲間だった千石清純だ」



はいはいやっぱりテニス部ね。柳が紹介してくれたので千石さんと向き合い自己紹介をすると、彼はにっこりと軟派そうな笑顔を浮かべ、握手を求めて来た。



「君すっごい美人だねー。俺の事はキヨって呼んでね!」

「オッケー、千石」

「あはは、こりゃ手厳しい」

「冗談よ」



さっきの表情はなんだったのか若干気になるけど、この和気藹々とした雰囲気でそれを聞くのも野暮な話だ。だから気付いてないフリをして、そのまま皆との会話を楽しむ。



「そういえばキヨ、アタシに聞きたい事ってなぁに?」

「あぁそうだ、本題忘れてた!この物品なんだけど」



でも、あくまでも3人は仕事中だからいつまでも話している訳にもいかない。キヨが小春にそう問いかけたのを区切りに、私達も再びインテリア探しに没頭し始めた。



「まさか千石がウチに入っていたとは、予想外だった」

「柳でもデータ漏れする事あるんだね」

「社会人になってからはさほど個人のデータ収集はしていない。そんな暇もあまり無くなったからな」



言われてみれば、入社したばかりの頃はよくノートを片手に持っていたのに最近じゃ滅多に見かけない。趣味が変わったというか、変わらざるをえなくなったというか。まぁ毎回事ある毎にデータを取られるのは良い気がしないし、これは良い変化としておきましょう。



「今回の企画も成功するといいな」

「成功させるんでしょ?」

「頼もしい」



笑顔で背中をポン、と叩いてきた柳に笑顔を向けると、珍しく照れた表情で顔をそむけられた。おぉ、いつもとは違う感じで微笑んでみるとこうなるのか。メモメモ。

ふと店内を見渡せば、小春から教わった事を一生懸命復唱している赤也君、あれやこれやと意見を言い合っている不二と白石など、まさに理想の職場とも言える光景がそこにはあって、私はもう一度にっこりと微笑んだ。ところでキヨ、さっきからこっち見てるのバレバレなんだけど。
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