マイ・スーパー・エンジン

結局自分の中で上手く整理がつかないまま、俺は入院することになった。入院してからまだ1週間だけど、まぁ退屈で仕方ない。あいつらもあいつらでまだ整理がついてないのか中々見舞いに来ないし、田代に至っては俺の連絡に全く応答しない始末だ。

全てが、俺の望んで無かった展開だ。



「暇だ」



いっそのこと、真田に部長の座譲ろうかな。副部長は蓮二で。まだ引き継ぎしたばっかだし、するなら今のうちだと思うんだよね。今度見舞い来たら言ってみよ。

…何とも無いと思っていたのは自分の心だけで、体は正直だ。苦しい。痛い。辛い。何より、あいつらとテニスが出来なくなることが1番辛い。少しくらい治る見込みがあるならそこに希望をかけて、とかいうのが普通なんだろうけど、もしその希望が打ち砕かれたらどう責任を取ってくれるんだ?どっちに転ぶか不安定なものに期待して明るくいられるほど、俺は能天気じゃない。

テニスがしたい、あいつらと一緒に。ただそれだけなんだ。



「幸村くーん、点滴の時間ですよー」

「…はい」



患者を元気付けるための看護師も、今の俺には邪魔でしかない。その笑顔が無性に腹立つ。なんて、こんな八つ当たりみたいな考え表には出さないけど。

そういえば、どこから俺のアドレスが流出したのか知らないけど学校の女子から異常にメールが来る。大丈夫?具合悪い?辛かったら話聞くよ、お見舞い行ってもいいかな、そんな当たり障りのない言葉がズラーッと気持ち悪いくらいに並べられてた。当たり前のように全部削除した。きっとその女子達は普段からテニス部を応援してくれてるんだと思う。でも、踏み入って良い所と悪い所がある。



「はい、終わり。後で晩ご飯運んでくるわね」

「ありがとうございます」



こんな風な嫌味ばっかが頭の中を渦巻いて、今日も1日が終わって行く。退屈だ。退屈で死ねそう。むしろ死ぬ?…っていうのは、いきすぎか。

自分の情けない考えを遮断するために、俺は本を読んで気を紛らわした。でも、鼻につく医薬品の匂いのせいでそれはほぼ無意味になってしまった。
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