今日も明日も明後日もその先も

ワーワーとうるさい騒ぎ声が響く体育館の隅っこに、私と仁王君は胡坐をかいて座っている。丸井君はこういった行事には積極的に参加するタイプなので、桑原君を巻き込んで楽しそうにはしゃいでいる。

卒業式5日前。今日は、学年レクのドッヂボール大会が開催されている。場所は冒頭で言った通り体育館で、試合形式は1試合5分の勝ち残りトーナメント。同時進行ではなく1試合ずつ順番に行われていくので、その分ギャラリーの注目度も高いのが厄介だ。面倒臭い事この上ない。

ちなみに今はD組とE組が試合をしているのだが、どちらのクラスにもあの人達のうちの誰もいないので、必然的に私達の興味も皆無となる。だから私と仁王君は退屈な気分でこうして座っているという訳だ。



「ブンは元気じゃのー。次試合なんに」

「無理矢理練習相手にさせられてる桑原君が可哀相だ」

「貴様ら!俺達が相手だというのにウォーミングアップもしとらんのか!」



その時、でかい影が落ちて来て視界が暗くなったかと思うと、頭上からいつもの暑苦しい声が聞こえた。わざわざ視線を上げなくても分かるその声の持ち主を予想して、私と仁王君は目を合わせて小さく溜息を吐く。で、仕方なく上に目をやる。



「…真田君、短パン短すぎやしないか」

「1年の頃のサイズのままなんじゃろ」

「着目すべき所が少々おかしいように思えますが」



そこには予想通り真田君と柳生君がいた。2人がいるA組とは次の試合で当たる事になっているのだが、本当に、何がなんでも当たりたくなかった。しかも真田君のジャージの短パン、やけに丈が短くて気持ち悪い。

くどくどと文句を言ってくる真田君をスルーして無言を貫き通していると、試合終了の笛の音が体育館内に響いた。その音を合図に、A組と私達B組の生徒達は立ち上がりコートに向かって歩き始める。なんだか皆やる気満々だ。



「おーい仁王、田代ー!敵と話してないで早く来いよー!」



既にコート内に入っている丸井君がそんな事を大声で言い出したので、私達は未だ小言を言っている真田君と苦笑している柳生君を無視し、小走りで彼の方へ駆け寄った。



「田代、真田なんかボコボコにしちゃえ!」

「良い試合になるのを楽しみにしているぞ」



向かっている途中で話しかけて来た幸村君と柳君の言葉に無表情で頷き、いつの間にか作られていた円陣の中に入る。



「やるからにはぜってぇー勝つぜぃー!!行くぞーっ!!」



オー!と地響きが起こるくらいの声量を聞いてか、他クラスからたくさんの声援が送られてきた。まぁ、丸井君と仁王君が揃ってれば当然か。

それからすぐにA組の掛け声が聞こえた所で、いよいよ試合は始まった。最初のジャンプボールは、ウチのクラスはバスケ部エースの笹谷君が出る事になっている。A組は…うん、予想はしていたがやはり真田君だ。



「キエェエエェッ!!」



高く掲げられたボールを奇声を発しながら取ったのは、物凄い顔をした真田君だった。これも予想通りだな、と思いながら即座にラインの隅の方によって安全を確保する。隣には同じ考えの仁王君もいて、私達は一生懸命ボールを追い掛け回して戦うクラスメイト達の姿を見つめていた。



「おっと、危ないぜよ」

「ありがとう」



と、その時。私達の方に野球部エースが投げた剛速球が飛んできたのだが、意外や意外、仁王君はそれを軽い感じで受け止めた。途端に騒ぎ出す他クラスの女子。いやはや声が枯れないのか、と的外れな事を考えているうちに、仁王君が投げたボールは見事相手の男子3人同時に当たった。更に沸き上がる歓声。



「なんか楽しくなって来たなり」

「そうか、行ってらっしゃい」

「お前も行くんだっつーの!」



今の一連の出来事が闘魂に火をつけたのか、仁王君は微妙にウキウキした様子でそう言って来た。だから私もそんな彼を送り出す為に軽く背中を押してやったのだが、結局丸井君に腕を引かれ2人と一緒に戦いの最前線に立たされてしまった。え、なんで。



「田代、避けてばっかいないで取れそうなボールは取れ!」

「えいっ」

「そう、ナイスじゃ田代!いけー!」



2人以外のクラスメイトも、ボールを持っている私に向かって頑張れー!、いけー!、などど声を掛けて来る。どうしても投げなきゃいけない雰囲気に呑み込まれた私は、外野にパスしようとしていたのを止め、力任せにボールを投げた。



「ぐふっ!」



あ、と仁王君と丸井君と声が重なる。真田君、鼻血出した。
 1/3 

bkm main home

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -