サンタクロース大作戦

冬休みに入った。

本来ならば受験に悩まされるこの時期だが、進路が既に決まっている私からするとそれは関係無く、更には部活も無いのでそれはそれはダラダラとした日々を送っている。寒いのでコンビニに行く為にちょっとそこまで、という行動すら起こさなくなったし、今の1番の親友はこたつといっても過言ではないだろう。

この前はお父さんにまた大阪行くけど行くか?と誘われたが、四天宝寺はまだ冬休みに入っておらず、しかもちょうどテスト期間で遊ぶ暇が無いとの事だったので、今回はその誘いには乗らなかった。暇が出来たら是非個人的に行こうと思っている。



「晴香ー、ツリーの飾り付けしましょー!」



自室で雑誌を読みながらお母さんお手製のクッキーを食べていると、下の階からそう私を呼ぶ声が聞こえた。お母さんだ。雑誌はただ単に暇潰しで読んでいただけなので、頼まれたツリーの飾り付けを優先する事にし、はーいと返事をしてから部屋を出る。

今日は12月23日。外には出ていないが、テレビを見る限り世間は通年通りクリスマスムード一色になっている。そしてその雰囲気に乗っかるのはウチも例外ではないらしく、お母さんは数日前から意気揚々とクリスマスの献立を考えている。



「晴香っ、クリスマス何食べたいー?」

「ケーキと肉」

「もー、それしか言わないんだからー」



お母さんだって同じ質問しかしないじゃん、と思ったのは口には出さず、私は自分の背より少し小さい程度のツリーに色々な飾り付けをした。

しばらくそうしているとピンポーン、とインターフォンが鳴り、お母さんは作業していた手を一度止めてパタパタと玄関に駆けて行った。が、その小さなパタパタは、帰って来る時には大きなドタドタに変わっていた。それも数人分の。



「田代!来ちゃったぜぃ!」

「…は」



一体何事かと思いドアの方を見つめていれば、姿を現したのはお母さんではなく丸井君だった。更に後ろにはいつものメンバーも勢揃いしていて、お母さんは柳生君と楽しそうに会話をしている。何だこの光景。



「テニス部の子達が遊びに来てくれたわよ!もー、この子に連れて来なさいって言っても面倒臭がるんだもん、やっと私の願いが叶ったわー」

「いきなり押しかけちゃってすみません、ご迷惑をかけて」

「いいのいいの!今お菓子持って来るから、この部屋で待っててねー!」



申し訳なさそうな顔で幸村君はお母さんに謝ったが、私にはわかる。今のは確実に演技だ。

驚いてツリーに手をかけた状態で立ち尽くしている間にも皆はどんどん部屋に入って来て、一気に人口密度が高くなる。最後に入ってきた桑原君が本当に申し訳なさそうに悪いな、と言って来た事によって、ようやく私は我に返った。



「何しに来た」

「ふむ、そういう可愛らしい部屋着も着るようになったのか」

「お母さんの趣味だ。何しに来た」



人の質問を無視してデータを取り始めた柳君は無視し、代わりに彼の隣にいる幸村君に視線を移す。



「題して、サンタを信じてる赤也にサンタクロース大作戦!」



すると幸村君は語尾にハートが付く勢いでそう言って、他の人達はそれを盛り上げるように拍手をしたり口笛を吹いたりした。目眩がした。
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