その笑顔が見たかったんだ

「じゃあな晴香、今度ウチに遊びに来いよ」

「それEーねー!一緒に遊ぼー!」

「あぁ、わかった」

「ほなまたな、大阪で待っとるで」

「うん」



あの後、切原君が出場したカラオケ大会も終わり(ちなみに結果は惜しくも準優勝だった)、それに伴い一般公開の時間も終了となった。氷帝と四天宝寺の皆を見送りに、私達立海は総出で校門前まで来ている。手を振りながら帰っていく彼らは今日で随分仲良くなったのか、この後全員でボーリングか何処かに行くらしい。



「なーな、部室で俺の和菓子スペシャル食ってから戻ろうぜぃ!」

「しかし、私と真田君はこの後教室の片付けが…」

「そんなん全員そうっすよ、良いじゃないっすか少しくらい!俺腹減ったっす!」

「田代、行くじゃろ?」

「勿論」



私達は私達で丸井君の提案により、教室に戻る前に部室に行く事になった。やった、ようやくあの和菓子を食べれる。そう思って意気揚々と丸井君の隣に並ぶと、嬉しそうに肩を組まれた。それを見た切原君が便乗して反対隣来て、同じように肩を組んでくる。あっつい。



「そーんなに俺の作った和菓子が食いたいか!このこのー!」

「別に美味しければ誰が作ってもいいんだが」

「照れちゃってまたまたー!」



この面倒臭い人達をどうにかしてくれ、という意を込めて後ろを振り返る。すると桑原君と目が合ったが、彼は苦笑しながら両手を合わせ、口パクで謝ってきた。まぁ、桑原君なら仕方ない。彼を巻き込む訳にはいかないからな。

となると他に助けてくれる人はおらず、結局部室に着くまでその状態で歩いた。この着ぐるみ、せめて顔と胴体が離れていれば少しは楽なのになぁ、と、騒ぎ続ける両隣2人をよそに思った。



***



「風船割りじゃぁあああい!」



次々に音を立てて割れていく数々の風船。丸井君なんかは妙に張り切っており、歯を剥き出しにして笑いとてもイキイキとしている。今は何をやっているかというと、教室装飾の片付けの真っ最中だ。部室で和菓子スペシャルを食べたには食べたのだが、和菓子の量に対し私達の人数が多すぎた為ものの数秒で食べ終えた。あれなら歩き食いで良かった気がする。



「後夜祭は何時からだったかのう」

「閉会式は15時らしいが、後夜祭は18時と時間が空くらしい」



ちなみにこれは柳君情報だ。



「でも、閉会式でも色々やるらしいぜよ」

「色々?」

「例年通りじゃろ」



例年通り…私は去年の海原祭には参加出来なかったから、記憶が1年の頃で止まっている為いまいち思い出せない。ていうか、1年の頃も多分寝ていた気がするし。まぁ概ね各大会の優勝者の発表や、教室展示の優秀クラスの発表等だろう。大体予想出来る。



「おい田代、仁王!風船誰が1番多く割れるか勝負しようぜぃ!」

「面倒臭い」

「折角なら賭け事せんか?負けた奴が2人になんか奢る」

「やる」

「お前食いモンしか奢ってもらう気ねぇだろぃ。まぁ俺もだけど、んじゃ始めー!」



突如丸井君がしてきた提案に私は最初は乗り気ではなかったが、仁王君の発言により椅子から立ち上がり、とりあえず近くにあった風船を鷲掴みにした。そしてそのまま風船割りはスタートし、教室内には更なる騒音が響き渡る。私達の様子を見た他のクラスメイトは何事か、と視線を送ってきたが、意図を理解するなり携帯で写真を撮ってきたりしてきた。まるで気分は動物園の猿だ。



「あ、ちょ、仁王てめぇ!それ俺が狙ってた風船!」

「じゃあ名前でも書いときんしゃい。書いとっても割るけど」

「うっぜー!!」

「隙あり」

「田代ずるいなり!」



風船確保に協力してくれた女子達にお礼を言いつつ、着実にそれを割っていく。その時、フと視界が暗くなったから、私は視線を上にやった。



「楽しい事してるね?」



するとそこには、まさかの幸村君がいた。そうだ、この人のクラスは展示という展示としていないから、片付けも早く終わるんだ。それで暇になったから私達のクラスに来た、という訳か。



「幸村君、手伝って」

「何これチーム戦?田代ハブられてるの?」

「いや個人戦だ」

「田代ずっりー!!幸村君とかチートだろぃ!」

「へぇ、そういう事なら田代の手伝いしよーっと」



それからの幸村君の風船捌きは素晴らしく、結果は私達の圧勝となった。2人はずるいだのせこいだのと色々文句を垂れていたが、幸村君の笑顔により一瞬にして収まった。さーて幸村君、何を奢ってもらおうか一緒に考えようか。
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