暑い熱い夏だった

「河川敷行ってパーティーするよ」



全国大会が終わってから3日後のミーティングで、幸村君は急にそんなことを言い出した。朝早起きして来たというのに、開口一番がこれだ。私達は目を点にしその言葉の意味を再度尋ねる。



「やっほおぉーーい!!パーティーー!!」

「テンションあがるぜぃ!!」



…この2人は別だが。



「幸村君、パーティーというとどういったことをするおつもりで…?」

「俺達のパーティーといえば焼肉しかないだろ。河川敷行くまでの通り道に家がある奴と言えばー…蓮二と仁王か。ちょっと家寄ってコンロとか取って来て。で、他の奴らはその間に近くのスーパーで肉調達。部費で落とすから好きなだけ買って来ていいよ、野菜とマシュマロと後他色々バランス良くね。後はー」

「ちょっと待て精市」



まさに文字通りマシンガントークを繰り広げる幸村君を一度止めたのは柳君で、とりあえず話を整理し始めた。

で、整理した結果がこうだ。…河川敷で引退祝いとして焼肉をする、らしい(なんだかまとまったのかよくわからないが)。



「そうと決まれば早く行きましょ!」

「幸村君、わざわざここに集まった意味はあったのか」

「え?だってここ来てから思いついたんだもん」



そう小首を傾げて言い放つ幸村君は、恐らく学校の女子からしたらとんでもなく可愛く映るのだろう。しかし私にとっては溜息の原因にしかならず、ハァ、と深い息が口から出た。

こうなった幸村君は誰にも止められないことは百も承知だ。幸村君がじゃあ行くよ!、と言って手を叩くと同時に、皆は俊敏に動き始めた。…なんだかんだその顔が全員楽しそうなのも、百も承知だ。



「今年は去年みたく店の食べ放題じゃ無いんじゃのう」

「それでも充分元取れてた気がするけどな」



河川敷までの道のりを歩いていると、ふいに仁王君と桑原君が去年の話を切り出した。確かに去年は焼肉屋に行ったな、私はまだマネージャーでもなんでもなかったのに無理矢理連行された覚えがある。それがなぜ今年はわざわざ全部自分達でやるのだろう、と全員が頭の上に?を浮かべていると、幸村君は何処か寂しそうに



「だって、俺達が立海テニス部としてこれをやるのは最後だろ」



と言った。…そうか、これで最後なのか。たった数ヶ月しかテニス部には在籍しなかったが、凄く内容が濃かったからそんな気がしない。高校に行ってもこの人達はテニスを続けるだろうが、全員で戦っているところを見るのはもしかしたらもう無いかもしれない。



「そうだな、幸村の言う通りだ。たまらん焼肉にするぞ!」

「副ブチョ、それちょっと意味わかんないっす」



そう考えると幸村君が寂しくなる気持ちもわかる。そして、少しでも多くの思い出を作りたくなる気持ちも。

相変わらず賑やかに歩くこの人達の後ろ姿を見ながら、この時間がずっと続けば良いのに、なんて柄でも無い事を真剣に思った。
 1/4 

bkm main home

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -