からっぽの頭に浮かんだのは

それは突然だった。



「(あー、眠い)」



いつも先生に呼び出しをされる時は大体仁王君か丸井君、もしくはどっちも一緒なのが基本だが、今日に限って居眠りをしていたのは私だけだった。私が先生の後ろを歩いている時に笑顔で手を振ってきた2人の顔が物凄く憎たらしかったのは、まだまだ根に持っている。あとで倍返しだ。

そんなわけでようやく課題を終わらせ、結構な遅刻だが今から部活に向かう。絶対三強に怒られるやだなぁ、と思うと足取りは遅くなるが、行かないわけにはいかない。だから私は靴箱で仕方なく外靴に履き替え、テニスコートに足を踏み入れた。

しかし。



「…何故だ?」

「やっと来たか田代、お疲れ」



なんとそこには、景吾君がいた。しかも真田君と試合をしている。着ているものは氷帝ジャージではなく、春休み一緒にジムに通っていた時にも着て来ていた私物のウェアだ。ということは、練習試合ではない。…そんなことは雰囲気からわかっていたが。

私に話しかけてくれたのは桑原君だけで、そのことからもこれがどれだけ異常な事態かが読み取れる。だから私は詳細をもっと知るために、唯一他の人より動揺していない桑原君に再度目を向けた。



「いきなり単身乗り込んで来たんだよ。しかも、若干真田が押され始めてる」



桑原君が困りながらそう言い放ったとほぼ同時に、幸村君が間に入って2人の試合を中断した。

なんの為に真田君と試合をしたのか、なぜ立海に来たのか。色んな疑問が頭の中を駆け巡る中、景吾君は私の姿を目に入れるなりそのまま近づいて来た。そして、



「お前は勝てよ、っつったが前言撤回だ。俺も勝つ」



私の肩に拳をぶつけて、勝利宣言をして来た。その表情はとても自信に満ち溢れていて、最後に会った氷帝と青学の試合後のあの日とはまるで別人だ。

私はそれが嬉しくて、同じように拳を作って景吾君の肩にぶつけた。景吾君は満足そうに笑って、そのまま帰って行った。



「晴香先輩ー!?」

「わかってる」



と同時に駆け寄って来たのは、何やら不満げな表情をしている切原君だ。あぁ、そういえばこの子は嫉妬深いんだったか。そのことを思い出して彼の頭に手を乗せながらそう言ってやると、思いっ切り腰に抱きついて来た。痛い。



「さーて田代、居眠りで呼び出されたとはどういうことかな?」

「…すまない」

「テニス部マネージャーたるものがそんな生活態度とはいけないな」

「全くだ、たるんどる!!」



痛いながらも若干和やかな雰囲気が流れたのも束の間、お約束の三強からの説教が始まる。見兼ねた切原君はとばっちりを食らうのを避ける為か、そそくさと私の腰から離れていった。遠巻きではやはり仁王君と丸井君が笑顔で手を振っていて、それを桑原君と柳生君が困惑した顔で見ていて。

本当にしょうもない人達だけど、この人達と一緒に勝ちたい、いや、勝つ。説教中に考えることではないが、私は改めて心にそう誓った。
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