ぐちゃぐちゃなままでかまわない

「(どんな反応をしてくれるのか)」



目の前にそびえ立つ、金井総合病院。私が命じられたマネージャー初仕事は、幸村君のお見舞い兼マネージャー採用の報告をしに行くというものだった。別に仕事として与えられなくても来るつもりだったが、まぁそれは置いといて。

冒頭でも言った通り、幸村君は今まで音沙汰無しでいた私をどう迎え入れるのだろうか。そして、私がマネージャーになったことをどう受け入れるのだろうか。



「幸村精市は何号室ですか」

「はい、幸村君ですね。えっと───…」



今までの空白の数ヶ月間は、幸村君の事を見つめ直すことが出来た、私にとって意味のある期間だった。病気についても、発覚した当初はとにかく意味がわからなく混乱していたが、今ではだいぶ受け入れられている。後確認すべきなのは、幸村君の気持ちだ。



「精市お兄ちゃん、遊ぼー!」



そしてとうとう幸村君の病室の前まで来ると、個室の中から楽しそうにはしゃぐ子供の声が複数聞こえた。それに優しく応える幸村君の声も聞こえる。

子供達には申し訳ないが、私は今からその和気藹々とした雰囲気を壊すことになるだろう。しかし、それも仕方ない。私は意を決してノックをし、幸村君のどうぞ、という声を合図に静かにドアを開けた。



「…え?」

「お兄ちゃん、かのじょー?」

「はじめましてー!」

「あぁ、はじめまして。ちなみに彼女じゃないぞ。そして久しぶり、幸村君」



中に入ると、5人の子供達と、その子達に囲まれて心底驚いた顔をした幸村君がいた。子供達は皆人懐っこく私に近寄ってきて、そのうちの1人の女の子は私の足にぴったりとくっついた。あ、これが母性本能をくすぐられるというやつか。



「随分子供に好かれているんだな。これなら退屈もしないだろう」

「田代、お前」

「…すまないが、少し他の場所で遊んできてもらえるか?」

「えー!後で遊んでくれるー!?」

「あぁ、遊ぼう」



私の言葉に子供達は素直に従い、バタバタと走りながら病室から出て行った。あんなに元気なのに病気持ちだというのだから、変な話だ。

さて。



「まず、長い間音信不通にしてすまなかった」

「本当だ、何考えてんだよこの馬鹿ふざけんな」

「いつもに増して口が悪いな」



なんともいえない表情で幸村君は腰掛けていたベッドから立ち、私の元に歩み寄ってきた。そして私の頭に手を乗せ、本物だ、と呟く。



「どんだけ人のこと待たせたと思ってるの」

「十分わかっている」

「ていうかよくお前俺からの連絡に応えられずにいたね。普通観念しない?」

「電話が1日100回以上来た時は流石に驚いたな」

「…ほんと馬鹿だよ、お前」



さっきから異常に馬鹿を連呼されてるのはさておき。とりあえずそこまで会話をすると、頭の上に置かれていた手が動き始めた。まぁ、わかりやすく言えば撫でられてるんだが。

さあ幸村君、話をしようか。
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