私の所属は最低グループ

「おい田代っ!シーサーだぞ!ガオー!」

「田代、よう見てみんしゃい、これが星の砂なり」

「…満喫しすぎだろう」



3泊4日の沖縄修学旅行。澄み切っている青い空に透明な海、都会では感じられる事のないゆったりとした空間、珍しい植物。その全てが生徒全員の好奇心を引き出しているが、なんにせよ気温が高い事には変わりなく、こうして丸井君と仁王君に付き合って歩いているだけでも体は汗ばんでくる。



「あ、田代はっけーん!」

「竹富島で合流、という約束はちゃんと覚えていたようだな。偉いぞ田代」

「うむ!それでこそ俺達の仲間だ!」

「しかし暑いな…」

「えぇ、ですがとても空気が新鮮で心が安らぎます」



加えてこの人達まで来てしまった。暑いを通り越して最早暑苦しい。しかも真田君、仲間ってなんだ仲間って。私がいつからこの輩の中に仲間入りしたというのだ、ただ好き勝手に振り回されているだけなのに。一瞬にして沢山の愚痴が沸き上がって来たが、暑さのせいでそれを口に出すのも面倒に感じ、とりあえず適当な相槌だけ打っておく。



「皆、グループの人達はどうしたんだ」

「やだなぁ田代、自由時間までグループの奴らと居る訳がないでしょ?笑顔作るの疲れるんだから」



それじゃあ自由時間まで同じグループの丸井君と仁王君と居る私はどうなるんだ。というか幸村君、発言が恐ろしすぎる。



「まぁよ、色々あるかもしんねーけどいつもより環境だって良いんだし、ここは楽しもうぜ?」

「桑原君がそう言うなら」

「即答ですね」



当たり前だ、桑原君の言うことに間違いなどない。

とりあえず出だしはこんな感じで絶不調だが、私は結局この人達と自由時間を過ごす事になった。真田君がさっきから珍しい物を見つけては私に紹介してくるんだが、正直物凄くウザいのは言うまでもない。



「やっぱえぇのう、たまにはこういう休息も必要なり」

「お前はいつも勝手に休んでいるだろう」

「まぁ参謀、そう言いなさんな」



やけにリラックスモードに入り始めた人達の事は放っておいて、私は桑原君の隣をただ歩く。



「田代!バナナがなっているぞ!」

「あぁもう真田君ウザい」

「いいじゃない、ご愛嬌だよ」

「真田君に少しでも愛嬌があると思うのなら、さっさと病院に行った方がいいぞ幸村君」



私が真顔でそう忠告すると、幸村君は聞こえなかったなぁ、と笑顔で頭を鷲掴みにしてきた。確実に聞こえていたくせに酷い、しかも頭がミシミシ言っててかなり痛い。



「幸村君、痛い」

「聞こえなーい」

「うわー、幸村君相変わらずドSー」



そう思うなら助けてくれ、という意を込めて丸井君を見つめたが、当たり前のようにすぐに逸らされた。役立たず。飛べない豚はただの豚なんだぞ。



「精市、その辺にしておけ」

「でも、こうやったら田代の堅い脳味噌も少しは柔らかくなりそうじゃない?ほら、田代ってもっと何事も柔軟に考えた方いいしさ」

「それには同意するが、田代の顔が究極にひきつっているのには気付いてるか」

「え?あ、ほんとだー!うわー田代不細工になってるー!」



悪かったな不細工で、それ以前に誰がそうしてると思ってるんだ。沸々と溜まる不満は一向に収まる様子が無く、こんなのが後何日も続くかと思うと気が遠くなった。この人達は揃いも揃って自分達以外の人間とつるもうとしないし、そんな中に引きずり込まれてはハナから逃げ道など皆無だ。

結論、私にとって修学旅行は拷問でしかない。
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