「行ーこーうーよー」

「いーやーだー」



原則として、部活をやっている生徒は放課後教室展示の準備を1時間手伝ったら、その後には部活展示の準備に取りかかる事になっている。だから俺は教室まで迎えに来てくれた蓮二と一緒に、ブン太と仁王、それにたまたまB組にいたジャッカルの事を迎えに来たんだけど、そこに田代がいたら勿論誘わないはずがないでしょ?



「ねぇ蓮二、田代がワガママ!」

「どっちがだ」

「精市、諦めなさい」



でも田代は俺がこうやって腕を引っ張っても、教室の柱にくっついて動こうとしない。いつまで経っても意固地な田代を見て蓮二に抗議してみたものの、蓮二はお母さんみたいな口調で注意してきただけたった。ちぇ、つまんないの。



「第一、テニス部展示の準備に私が行って何になるんだ」

「え?俺の暇つぶし役」

「それは堂々と公言することではないぞ」



しかも、蓮二の言葉に田代は首がもげそうになるくらい全力で頷いた。もー、そのままもげちゃえばいいのにー。



「また明日構ってやるからな!俺達がいなくてもちゃんと仕事進めるんだぞぃ!」

「……………あぁ」

「田代、その間からしてお前絶対にやらないだろう」

「明日も一緒に作業やるだにー。…指痛いけど」

「大丈夫か?仁王。じゃあな田代」

「仕方ないからお前連れてくのは諦めるけど、寂しがらないでね?」

「さっさと行ってくれ」



未だ尚柱に引っ付いたまま目を細めて心底嫌そうな顔をする田代に、俺達はそれぞれ手を振ってその場を離れた。5人で廊下を歩いてるとやたら見られるけど、別に凡人達の視線なんてどうでもいい。俺はただただ楽しさを隠しきれなくて、4人の何か言いたげな顔に気付いていながらも口元を緩ませ続けた。



「幸村、何笑ってんだ?」



そこで4人はアイコンタクトをとったのか知らないけど、代表してジャッカルがそう聞いてきた。なんか言わせられた感満載だね。



「ん?田代って可愛いなぁと思って」

「そげんことは知っとるぜよ」

「だって、ブン太が構ってやるとか俺が寂しがるなとか言った時、拒否も否定も何もしなかったじゃん。わかりにくいけどあいつって素直なとこもあるよね」

「確かにあの受け答えには俺も興味を抱いた。俺達に少なからず懐き始めてる、と踏んでいいだろう」

「マイペースすぎる猫みてぇだなーあいつ」



マイペースすぎる猫ねぇ…どっちかっていうと常に逆毛立ててる猫、って感じだけど。まぁどっちも間違っちゃいないか。



「蓮二、田代絶対模擬店に連れ込もうね」

「当たり前だ」

「俺達の素晴らしい演劇も見せてやろうぜぃ」

「そうだな」

「楽しみ、海原祭!」



仁王がやけに子供じみた感じでそう言ったのを合図に、俺達の話題は準備の内容にズレた。誰の為にこんな頑張ってるか、って?決まってるだろ、あの猫をもっと懐かせるためだよ。
 3/5 

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