「私はやっぱり───…」 「───…だよね!」 夜。 ホテルでご飯も済ませて部屋に戻って来た訳だが、クラスの女子と4人1部屋というのは中々キツい。それは、今この人達が話している恋だの何だのの話に私は全く興味がないからだ。だから1人でちんすこうと紅芋タルトを頬張りながら備えのテレビで適当な番組見ている。うんまい。 「田代ちゃんはどうなのー?」 「へ?」 ただむしゃむしゃとそれらを食べながらテレビに集中していたら、ふいに1人の女子が興奮した様子で話しかけてきた。便乗して残りの2人も瞳を輝かせながらこっちに視線を送ってくるが、何故いきなりターゲットが私になったのかが理解出来ず、ただただ眉を顰める。 「どうなの、とは?」 「またまたーっ!田代ちゃんあのテニス部と仲良いじゃん!あの中に好きな人いるんでしょー?」 「ぶっ」 「田代ちゃん、紅芋タルト噴き出さないでー」 噴き出させるような事を言ったのは誰だ。…好きな人、だと?ましてやあの人達の中に? 「有り得ない気持ち悪い」 「えー!?何その贅沢な悩み!田代ちゃんずーるーいー!」 「そうだよあんなに構ってもらってるのにー!」 「そう言われても、あれは私が頼んでるわけではない。むしろ結構な勢いで迷惑だ」 「ふーん?」 騒ぎ続ける彼女達に釘を刺すためにそうキッパリ言い放つと、2人はつまらなさそうに言葉を漏らしたが、1人は意味深に微笑みかけてきた。何が言いたいんだ。 「何だ?」 「田代ちゃん、1番生き生きしてると思うよ、テニス部の人達といる時」 「は?」 2人の意識が違う方に行き、私達は私達だけの空間で言葉を交わす。特に嫌味を言われてるわけでも険悪ムードなわけでも無いんだが、意味深すぎて意味がわからない。 「たまには素直になりなよ、ね!」 そしてその子はその言葉を最後に、再び2人の会話に参加していった。私も私でさっきと同じように、再びテレビに見入る。 皆して、何なんだ。 今日の柳君といい、今のクラスの女子といい、つくづく私の周りには変な人ばかりが揃ってる。素直になる?そんな事したらそれこそあの人達にからかわれるに決まってるじゃないか、わかっていて自らなるはずがない。 …あれ、待てよ、じゃあ私の素直な気持ちって、 「あああぁあぁああっ」 「えっ!?」 「ど、どうしたの田代ちゃん!?」 私の唐突な癇癪に2人は驚き、さっきの1人はまた意味深な笑みを浮かべた。 「素直になれた?」 「…君のせいだ」 少し見えてきた自分の素直な気持ちを口に出すなんていう自殺行為は絶対にしない。とりあえずもういいや、またなんか食べよう。そう思って備えのサーターアンダギーを口に放り込んだけど、なんというか、無味だった。 |