「結局こうなるのは目に見えていた事だが、お前はどう思う」

「私に構ってくれさえしなければそれでいい。兎に角もう疲れた」



連れ回されること約30分、この人達は既に観光に飽きたのか、このだだっ広い場所の中急に缶蹴りを始めだした。缶はさっきまで丸井君が飲んでいたものを使っている。その突発的すぎる行動に勿論私は参加せずに芝生に座って傍観していると、柳君が隣に腰を降ろしてきた。彼からも参加する意志は微塵も感じられない。ちなみに桑原君は不憫な事に巻き添えをくらっている。後でなんかあげよう。



「前々から気になっていた事を聞いても良いか」

「なんだ」



何処だー!、と叫びながらあの人達を探し回る丸井君を見ながら、私は柳君の唐突な問いかけに答えた。気になっていた事?



「お前は、俺達と関わるのが面倒なはずだな?」

「あぁ、かなりの勢いで」

「ならば何故俺達といるんだ」

「それを君が聞くのか」



驚いた。柳君ってこんなに空気が読めない人だったのか。驚きに呆れが混ざった溜息を吐いてから、投げやりに質問に答える。



「君達がしつこく付きまとってくるからに決まっているだろう」

「しかし、無理矢理にでも離れる事だってできるだろう」

「無理矢理行動を起こしたところで後始末が面倒だ。それを考えたら何もしないで隣にいる方がまだ良い」

「成る程な」



柳君はそこまで話すと、持っていたノートに何かを書き始めた。覗こうと思い首を伸ばしても隠される。折角答えてやったのにこうもコソコソされると若干腹立つな。



「見せてくれたっていいじゃないか」

「気になるのか?」

「当たり前だ、私が話した内容に関連しているんだから」

「興味があるのか?」

「…さっきから何なんだ」



薄々感じ取ってはいたが、柳君は何かを私に言わせようとしている。回りくどいのは嫌いだ、用件があるなら単刀直入にさっさと言ってほしい。だから私がそれを目で訴えると、柳君はフ、と小さく笑い、言葉を続けた。



「何だかんだお前は俺達に居心地の良さを感じている、違うか?」

「断じて違う」

「ほう、なぜだ」



どれだけ的外れな事を言うんだこの人は。とうとう気が触れたか。



「こんなにうるさくてしつこい人達なんか初めてだ。人の機嫌構わず絡んでくるわ、行動は一々突発的だわで着いていけない」

「飽きないだろう?」

「悪い意味でな」

「では、」



そして柳君はそこで、それまで書いていたノートをパタンと閉じ、何故か開眼して私に向き合ってきた。



「俺達がいなくなったら、どうする」



───ほら、またこうやって突発的な事をしてくる。でも、頭に手を添えられながら言われたその言葉が、何故か重くのし掛かる。別に誰にも興味なんて無い、無いはずなのに。



「私も缶蹴りしてくる」

「そう来たか」



何とも言えない感情が心を疼いたのが妙に気に食わなくて、私はそのまま立ち上がり缶蹴りに参戦する事にした。それに気付いたあの人達が、手を振って私の名前を呼んでいるのが見える。



「柳君」

「なんだ?」



ああ、それにしても



「そんな事、言うな」



変な人達ばっかりだ。



「…俺も参戦するとしよう」

「何で」

「田代がいるからな」

「何それ」



結局私達は日が沈むまで缶蹴りやら鬼ごっこやら色んな遊びをした。その空間は心地良いとは言えなかったが、不覚にもどこか安心した。柳君の質問はこの際忘れる事にする、異論は認めない。
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