「そういえば、もう少しで先輩達修学旅行ッスよね!」 「あ、言われてみればそうじゃのう」 「やっほーい!沖縄だぜぃ!」 「いーいーなぁー…」 昼食をとり終え雑談モードと化したその場に何故か私も居座っていると、ふいに切原君がそんな話題を出して来た。それに心なしか切原君以外の人達は嬉しそうに顔を綻ばせたが、私はといえば特になんの感動も無く、ただ沖縄は暑そうだなぁと思うだけだった。 「田代、一緒の班になろうな!」 「別にどうでもいいが暑いのが嫌だ」 「確かに、折角東京は涼しくなってきたのに、という感は否めませんけどね。それでもここは楽しむべきですよ、田代さん」 柳生君の言葉が耳に入るが、嫌なものは嫌だ。私はその意を込めて退屈ぎみに目を閉じ、フェンスに軽く背中を預けた。食べた後だから眠い。 「だめー寝かせないー」 「…幸村君、重い」 と思ったら幸村君が圧し掛かって来た。怠い。 「先輩達、かわゆーい後輩にお土産頼みましたよ!」 「かわゆい後輩、か。全く持って姿が見えないな」 「そうじゃのー、全くわからんぜよー」 「ひっど…!」 「あんまいじめんなよ」 切原君をからかう柳君と仁王君に、苦笑いしながらやんわりとそれを止める桑原君。それを見て、なんでこの人達はこうも連携が出来ているのか、と感心しているのか馬鹿にしているのか自分でもよくわからない感想を抱く。 「赤也、俺達がいない間もしっかりと鍛え抜くのだぞ!手抜きは厳禁だ!!」 「へいへい…」 「返事は1回!“はい”だろう!」 「はいーっ!!」 …それにしても切原君、散々だな。1人だけ後輩という立場ではこうなってしまうのも仕方ないことなのだろうが、こうも責め立て続けられるとは。助けるつもりはないが。 「それって田代が1番酷いと思うよ?」 「サラッと心を読むな幸村君」 「えへへ、ごめーん」 そこで急に心の独り言に参戦して来た幸村君に、キッと睨み付けながらそう言ってみたものの、彼は舌を出しながら何の悪気も無く謝って来た。そんな風に謝られてもむしろ殺意が沸きあがるだけだ。きっとこの人は、それもわかっててやっているのだろう。 「それよりそろそろチャイム鳴るぜぃ。仁王、田代、戻んぞー」 「ん」 「わかった」 そうしてようやく丸井君が話を切り上げた所で、私は1番に屋上を後にした。まぁ、結局途中までは全員で戻ることになるから、あまりこの行動は意味が無い。どれだけ集団行動が好きなんだこの人達、と思っていると、私の隣に涼しい顔をした柳君が並んで立ってきた。 「修学旅行でも同じような光景が多々見られそうだな」 …そんな予想は絶対に外れて欲しいと願った、ある日のこと。 |