「田代ー!!ごめん田代気付かなくてごめんー!」 「ほんっとごめんな、菓子食うか!?飯食うか!?」 「うるさい」 柳君が教室へ戻った後、更にもう1時間を保健室で過ごし、昼休みの今無事に私も教室へ戻って来た。しかしそこには柳君から事情を聞いたのか、涙目でとにかく騒がしい仁王君と丸井君がいた。厄介うるさい。 「貧血とか、まさか頑丈な田代がなるとは思っても無かったからびっくりしたぜぃ。大丈夫か?」 「あぁ、もうそこまでだるくない」 「とういことは少しはだるいんじゃな!?どこがじゃ!?横になるか!?俺の膝貸す!?」 「いや、全然怠くない」 少しの言葉も見落とさない仁王君が今は憎い。それにしても、生理だということは言わないでくれたんだな。小さな気遣いをありがとう柳君。 「田代!お前貧血ってどういうこと?」 「田代さん、腹痛薬を買ってきましたよ!さぁ早く飲んで!」 「田代、腹痛ごときで根を上げてはいかんぞ!」 「晴香せんぱぁああいっ!ほら、お腹に優しいりんご!食べて!」 「…大丈夫か?」 「…ありがとう桑原君」 心の中で柳君に感謝しつつ、騒がしい2人を無視して昼食をとろうと思ったら、次は違うメンバーが立て続けに教室に入って来た。一気に名前を呼ばれ、押し寄せられ、箸を進める手が強制的に止められる。なんなんだもう 「田代」 「柳君。運んでくれたりと色々世話になった、ありがとう」 「気にするな。もう大丈夫なんだな?」 「あぁ、さっきよりはずっとマシだ。食欲もある」 「なら良かった」 柳君は介護をしてくれた張本人だからきちんとお礼を言っておく。今まで変なデータ男だと思っていてすまなかった、柳君。 「ねぇ田代!」 「なんだ」 私が騒ぎ続ける彼らを再び無視して昼食に口をつけていると、急に幸村君が女子さながらのテンションで近寄って来た。そして私の耳元に口を近付け、こう言った。 「もしかして、女の子の日?」 「…」 「今度は蓮二じゃなくて俺に頼ってくれても良いからね」 「いややめておく」 幸村君に頼ると何をされるかわからない。私がその意も込めて彼に返答すると、彼は楽しそうな笑みを浮かべた。全く持って意味がわからない。 「ほらお前ら、ここじゃ狭いから屋上行って食べるよ」 「お、良いッスねー!」 とそこで幸村君が上げた声に、ようやく静かになるんだと一息吐く。早く行け、早く行け、と卵焼きを咀嚼しながら彼らが去るのを待っていると、不意に箸を持っていない方の腕をガッと誰かに引かれた。 「ほら行きますよ田代さん」 「君はそういうキャラじゃないだろう」 「じゃあ俺が弁当持ってあげるなり」 「頼んでない」 …どうやら人生はそう上手くいかないらしい(段々この展開に慣れてきた自分が怖い)。しかも柳生君が私を引っ張るとは何事だ、やはりこの人はエセ紳士だ。紳士の出来損ないだ。仁王君なんか私のお弁当をつまみ食いしてる。くたばればいいのに。 「幸村一家はゆっかいだっなー!」 私が延々と愚痴っている間にも、前方にいる幸村君はサザエさんさながらの動きで皆を引き連れている。廊下でサザエさんごっこをする輩がどこにいるんだ、とツッコんだ所ですぐ目の前にいることに気付き、私はもう一度溜息を吐いた。 |