「田代!クローバー8個見つけた!」 「私は10個だ、残念だな仁王君」 「っつーかクローバー探しにどんだけ夢中になってるんすか俺達」 来た時はちゃんとした水の色が輝いていた河川も、今では夕焼けに照らされオレンジ色に化している。そんな風景の中彼らは河川敷の芝生に座り、特に何をする訳でもなく適当に雑談を交わしていた。 「そういえばよぃ、田代って部活はいんねぇの?」 「今更入る訳がないだろう」 「運動神経良さそうなのにな。さっき真田と競争してた時良い勝負だったぜ」 「ありがとう桑原君、しかしあれは競争では無い、私が逃げてただけだ」 「お前が俺の頭に毛虫などを乗せるからだろう!」 「むしろ先輩が冷静に毛虫を掴んだ事に俺はびっくりしたっすよ」 いつまでも止まらない会話に、賑やかな雰囲気。そんな楽しい時間を過ごす晴香達だが、明日もテニス部は普通に練習があるためそろそろ解散時のようだ。 「ま、とりあえずさ。円陣でも組もうよ」 『イエッサー!』 「田代も早く入りんしゃい?」 「いや、いい」 「なーに今更遠慮してんだよぃ」 「いい」 そこで幸村は1日の締めくくりとしてか、円陣を彼らに持ちかけた。彼らは勿論すぐに反応するが、対称的に晴香はその輪の中から1人外れ距離を取った。 「ここから見てる」 主に丸井、仁王、切原が最後まで輪の中に入る事を誘ったが、その晴香の言葉を最後にようやく諦めたようだ。 「結果的に、確かに今年の優勝を決めたのは俺を含めた三強だ。でも、来年はここにいる全員で優勝を決めたいと思ってる」 幸村の力強い言葉に反応し、メンバー達も強く頷く。 「だから、来年の全国大会も───絶対に勝つぞ!」 『イエッサー!!』 先程までのふざけた雰囲気など皆無なその様子は、これまで何にも無関心だった晴香の心を多少なりとも動かした。 「よし、田代寂しかったねーおいでー?」 「晴香せんぱーい!俺の胸に飛び込んでおいでー!」 「…おかしな人達だ」 と思えば、瞬時に先程のいつもの彼らに戻り。調子を狂わされっぱなしな晴香は一言そう呟くと、至ってマイペースに彼らの元へ歩き出した。 心を許した訳では無い。熱烈な興味が引き付けられた訳でもない。子供っぽいし、やることはめちゃくちゃで理不尽だし、突発的な行動にはついていけない事がほとんどだ。でも、それでもその光景は、呆れるほど、鮮やかだった。 --- ※ブン太は2年なので公式より少し小さいという設定でお願いします。幸村達が2年の時の全国大会のレギュラーメンバーは不明なのでとりあえず三強にしておきました。 |