「田代!どこまで運べばいいのだ!」 「どこまでも」 「貴様ぁああぁ!」 好き放題やらかしてきた焼肉店を出て、俺達は今、帰り道にあった河川敷を適当に歩いている。俺達はこんなにお腹きついのを我慢してちゃんと歩いてんのに、前方では田代が真田の背中に乗って1人で楽な思いしてるのが見える。あーあー、田代ってばずるいなー。 「仁王、あの2人に石投げてきてよ」 「それはさすがに暴挙じゃ」 「うえー…食いすぎたー…」 「無駄に張り合うからだろ、ほら大丈夫か?」 と思ったけど、こっちでも同じ事が起こりそうだ。ジャッカルの甘やかしに調子に乗ったブン太は、悪知恵を思い付いたような顔でニヤリと笑い、そのまま「ジャッカルおんぶ!」と言い出した。 「は!?なんで俺が、」 「よっこらせ、っと」 「お、重い!お前重いぜ!」 「食べた後ですから仕方ないですね」 「じゃあー…次期ブチョ!俺の事おぶってくださ「死にたいの?」うわあぁあん!柳せんぱーい!」 「ワガママを言うからだ」 そんなブン太に赤也も便乗しようとしたみたいだけど、この俺の背中に乗ろうなんて何億光年も早いよ。と、そこで一向に話し出さない仁王に目を向けると、奴は顔を真っ青にしてお腹を抑えていた。いやいやどんだけ具合悪いの、お前なんだかんだレバーめっちゃ食べてたじゃん、鉄分補給したのに顔色悪すぎだろ。あんまり苦労かけるなよ。その意を込めて仁王の背中を軽く叩くと、へらっとした活気の無い笑顔を返された。重症だこれ。 「精市、これから何をするのだ?」 「ん?なんも決めてないよ」 「だと思った」 と、そこで蓮二から問いかけられた質問に即答すれば、また即答された。だったらなんで聞くのさ、馬鹿だなぁ蓮二。 「───…、…!」 「……、───…」 「あれ、あいつら何してるんだ?」 その時、結局ブン太をおんぶして歩くハメになったジャッカルが前方を見ながらそう言った。あれ、田代と真田いつの間にあんな前にいんの。しかもしゃがんで何か言い合いしてるし。 「早く行った方がいいんじゃねぇ?真田キレたら誰かれ構わずだしよ」 「田代…!」 「あ、仁王先輩俺も行くっスー!」 「全く、仕方ないですね」 そんな2人を見るなり、俺と蓮二以外の5人は2人の元へ全力疾走で駆けて行った。さっきまでお腹きつくて動けないとか言ってたの誰だよってね。 「蓮二は走んないの?」 「俺が走ると思うか?」 「ううん、走ったら面白いなって思っただけ」 「…それにしても、」 田代は不思議な奴だな。 唐突に投げかけられたその言葉に、ちょっと驚いたけど確かに共感はするので、ほんとにね、と頷いておく。不思議というか変というか、なんかそういう言葉では収められないよなぁあの子。 「精市、田代が来るぞ」 「え?」 そんな風に俺達が田代について話してたら、前方から噂の帳本人がトタトタと走って来た。ってかあいつらは?あれ、なんかしゃがみこんでるし。 「幸村君、柳君」 「どうしたの田代?しゃがみこんで何やってたの」 「その後ろの手に隠してるのはなんだ?」 色々と謎な状況に俺と蓮二は質問攻めするけど、田代はそれを全部スルーして、 「あげる。優勝祝いだ」 2人分の四つ葉のクローバーを差しだしてきた。 「…お前もこんな乙女チックなことするんだね。真田とこれ探してたわけ?」 「勘違いするな、真田君が急に足を止めたんだ」 「だからと言ってお前から俺達にこれが貰えるとは、やはりなんだかんだお前も女なんだな田代」 「や、やっぱいい返せ」 クローバーを奪ってこようとする田代の手を容易く避けて、蓮二は田代の右手、俺は左手を掴んで再び歩き出す。 「なんだこの手は!」 「ん?可愛い田代が逃げないようにね」 「良いデータが取れた。あいつらもこれを探しているのか?」 「…そうだが」 「さっき弦一郎と言い合いをしていた理由は?」 「どう見ても三つ葉なのに真田君が四つ葉って言い張るから」 「あいつ老眼だから許してあげて」 馬鹿みたいに夢中になって四つ葉のクローバーを探すこいつらと、無表情ではあるけど心なしか楽しそうな田代。この光景がまた来年優勝した時に見れればいい、なんて思ったことは絶対言ってやんないよ。とりあえず、ありがとう田代。 |