「で、本当なんすか」 「?何がだ」 「謙也さんの話。米俵のごとくドリンク持ったっちゅーやつ」 食べ始めてかれこれ1時間は経った時、隣に座っていた財前君がふいに話しかけて来た。謙也が育てていたであろうたこ焼きを自然に横取りしてから、財前君に向き合って質問に答える。 「本当だが」 「晴香さっきから俺のたこ焼き取りすぎやろ!アホ!」 「謙也うっさいでぇ!」 怒り出した謙也君を鎮めてくれた一氏君に、心の中で親指を立てておく。 「へぇ…ほんまにこない細い腕で持てるんすか?」 「別にあれくらい普通だ。石田君なら片手で持てる」 「いやいや、体格がちゃうやろ」 何がそんなに信じられないのか、財前君は私の二の腕を掴み持ち上げながら、不思議そうな顔で見つめてきた。だからそれに思った事を言い返せば、次は白石君に冷静にツッコまれる。なんか、ボケているつもりはないのだがさっきからやたらと皆にツッコまれる。これも大阪人だからなのか? 「晴香さん、ほんまツッコミ所多すぎっすわ」 「そうでもない。これぐらいで過剰反応する謙也がおかしい」 「いや、俺に厳しゅうない?」 「ってゆーかぁー!!」 その時、それまで一氏君と何やら2人の世界に入っていた(愛の形は様々だ)金色君が、急に立ち上がって叫び始めた。何事。 「なんで晴香ちゃん、謙也は謙也なのにアタシ達のことは名字と君付けなのー?」 「確かにそうやなぁ」 「せやせや、俺達の事も名前で呼んでや!俺達だって名前で呼んどる訳やし!」 一氏君の言葉に便乗して、他の人達も力強く頷いてくる。人を名前で呼ぶのはあまり慣れていないが、呼んで、と言うのなら別に逆らうつもりはない。でもその前に、 「もう1回名前を教えてほしい。名字しか呼んでいなかったから忘れてしまった」 確認をしなければ。…あれ、どうしたんだ。全員コケたぞ。 *** 「腹きっつ…!」 「謙也は胃袋が小さいな」 「晴香が異常やねん!!」 「確かに晴香はん、最後の方は1人で食ってはったな。あっぱれや」 「別に普通だ」 午後8時。たこ焼きパーティーは夕方から始めたので、なんだかんだ結構な長時間食べ続けていた事になる。途中ロシアンルーレットを行った際に当たったワサビは中々きつかったが、胃的にはまだ大丈夫だな。 「ほんまギャップの塊やわ、自分」 「蔵ノ介、猫は?」 「無視かい。この部屋の匂いに負けてどっか行ったんちゃう?」 「成程」 ワサビの他にも色々な香辛料、調味料を使ったからな。無理もないだろう。 そんな感じで全員がその場に横たわりお腹を休めていると、トントン、とドアを叩く音がした。それに蔵ノ介がなんや、と答える。 「失礼するでー、晴香ー…ってクッサ!!」 入って来たのはお父さんで、後ろにはお母さんと白石家の父母もいることから、そろそろ帰る時間になったという合図だろう。にしてもそんなにこの部屋は臭いのだろうか。 「晴香ちゃん、楽しんでくれたみたいやなぁ」 「美味しかったです」 「またいつでも来てちょうだいね」 「はい、ありがとうございます」 白石家の父母にそう言われ、軽く挨拶をする。 「晴香さん帰ってまうんすか?」 「あぁ、いつかまた」 「じゃあアドレス交換しましょーよっ!」 そして小春のその言葉で、私は皆とアドレス交換をする事になった。普段携帯にはあまり触れないのだが、一瞬にして電話帳の件数が増えた。 「お邪魔しました」 最初は最悪だと思ったが、美味しいものは食べれたしなんだかんだ楽しかったし、まぁ悪くない1日だった。ツッコまれすぎて頭が痛いのはこの際流しておこう。四天宝寺中、また、いつか。 |