「な、ななななんでおるん!?」 どれくらい時間が経っただろうか。気持ち良く日光浴しながら寝てたのに、突然耳に入った叫び声でそれは盛大に閉ざされた。猫もびっくりして威嚇しまくってるし、一体なんだというんだ。 そう思い超絶不機嫌な状態で目を開ければ、そこには個性派揃いの男子が4人いた。凄く見られている。しかもそのうちの1人はよくわからない疑問を私に投げかけて来た。なんで、って…そんなのお父さん達に聞いてくれ。私は眠たい、寝たいんだ。 「って寝るなぁああぁ!!」 「うるさいな」 その欲求に従おうとまた寝っ転がったら、さっき叫んだ人がまた、次は耳元で叫んできた。うるさい。誰だろうこの人。 「お、お前ら!これがさっき話しとったドリンクを米俵のごとく持つ女や!」 「せやから信じませんって、こない細腕の子が持てるはずないやん」 「ほんまやて!な!?」 米俵のごとくドリンクを持つ?最初は何の事だと思ったが、次第にあぁもしかして、と心当たりが浮かび上がって来た。多分、海に行った時の事だろうか。しかし何故それをこの人が知っている。 「君は誰だ?」 「へ?…自分、覚えてないん?」 「全く」 「謙也1本取られてもうたわねっ!」 素直に質問をぶつければ、オカマっぽいくねくねした人が“けんや”の肩をぽんぽん、と叩いた。けんやは肩をがっつり落としてる。なんだ、私が何をしたというのだ。 「俺、自分がドリンク買うてった海の家でバイトしてたんやけど…」 「…あぁ、あの客がいるにも関わらず喧嘩し出した店員の1人か」 私がそう言えばけんやは更に肩を落とした。それ見て他の人達は笑い始めたが、とりあえず私は寝ていいだろうか。 「謙也ー何叫んどるん…あ、晴香ちゃん?」 「…どうも」 すると次は腕に包帯を巻いてる人とお坊さんが入って来た。本当に、なんだってこんな個性派ばっかりなのかが私には理解出来ず、思わず唖然とした表情で会釈をしてしまった。だがそんな私を見ても包帯君は柔らかい笑顔で対応してくれて、多分この人達のまとめ役なんだろうなぁと悟る。 「おとんとおかんに頼まれたんや、晴香ちゃんをよろしくて」 「…遠慮しておく。完全に私場違いだろう」 「遠慮せんでえぇって?なぁ?」 包帯君がそう言うと、未だに落ち込んでるけんや以外の他の人達は口々に賛同の声を上げた。大阪人、社交的すぎる。 「神奈川から来たんやろ?本場のたこ焼きの味食わせたるで?」 「食べる」 まぁでも、たこ焼きが食べられるというのなら一緒にいても良いかもしれない(所詮食に勝るものなし)。 「ほな、自己紹介からいこか。俺達は四天宝寺中のテニス部や。財前以外は全員2年で、俺は白石蔵ノ介。ちなみに部長やでー」 「はぁ」 「…1年の財前です」 「ども」 それから順々にこれまた個性的な名前が発されだけど、いっぺんにハイペースで言われたものだからうろ覚えだ。すまない皆。で、これは私も自己紹介をする流れだろうなと思い、若干ためらいつつも口を開く。 「立海大附属中2年、田代晴香だ」 「立海?もうすぐ決勝やん!」 「…決勝?」 「テニスのよ!知らなかったの?」 えっとー…あぁそうだ、一氏君に、金色君。2人にそう問いかけられ、私は思わず頭を悩ませる。全国大会決勝はもうすぐなのか?てっきり夏休み明けにあるものだと思っていた。私がそう彼らに言うと、珍しい子もおるんやな、という返事が来た。そうか私は珍種なのか 「それより早く始めましょ、謙也さんもいい加減立ち直って。ウザいっすわ」 ピアスが印象的な財前君がそう言ってけんやの頭を叩く。けんやと目が合う。 「…忍足謙也」 「ん?」 「次は覚えてな」 忍足君。いや、今までけんやって呼んでたから謙也でいいか。謙也は少し不安げにそう言って来た。 「あぁ、覚えた、謙也」 だから私がはっきりと名前を言って返事をしてあげると、謙也は嬉しそうに立ち上がって着々とたこ焼きの準備をし始めた。なんとも切り替えが早い、面倒くさいが単純だからまだ扱いやすいな。 …という感じで、どういう成り行きかこの人達と私はたこ焼きパーティーをするらしい。本当にどんな流れだろう、これ。 |