「これくらいでヘバってんなよ?先輩方なんかより俺達の方がずっと強いんだ。俺達が勝たなくてどうする!」 で、結局海に着いた訳だが。 「田代、飲み物買ってきて。3分以内に」 てっきりこの人達の事だからふざけてるだけだと思えば、人目のあまり着かない方面に来るなり幸村君によるスパルタ特訓が始まった。ちなみに言ってる内容は先輩方が聞いたらとんでもないことになりそうだが、確かに正論だろう。関東大会の決勝を見る限りそれは明白な事だ、ほとんど幸村君達のおかげで優勝したようなものだったから。 「(それにしても、3分以内は無理だろう)」 かと言って情熱的な想いが特に生まれるはずもなく、私は幸村君に笑顔の圧力をかけられたにも関わらずマイペースに買い出しに出ている。よく丸井君達から怖いもの知らず、などと言われるが、それはこういうことなのだろうか。まぁ幸村君に怯える事は無い、そもそも私は関係無いのだから。 そして人気の多い場所に着き、ドリンクを買うべくそこから1番近い海の家に入る。各自ボトルは持ってきているようだから、ただ大容量の飲み物をいくつか買って行けばいいだけだ。 「いらっしゃいませー。…あー、せっかくの夏休みやっちゅーのに謙也と海の家でバイトとかありえへんわ」 「しゃーないやろ!今日1日だけやしそれくらいえぇやん。すっかり東京モン気取りか?廃れたなぁ侑士!」 「は?なんやて?」 …と思ったが、ドリンク選びをしている私の後ろ、すなわち会計場所で男達の討論が聞こえる。客の前だということをわかってるのかこの人達は。いや、喧嘩するのは別にどうでもいいがこれじゃあ私が買いにくいじゃないか、全くどうかしてる。 「そない言うんなら表出ろや!」 「上等やかかってきぃや」 「え」 しかも挙句の果てには出て行こうとしている。それは駄目だ、無駄に時間を食うのは好きじゃない。 そう思った私は後ろから2人のTシャツを掴み、出て行く事を止めた。 「「誰や!」」 「客や。じゃない、客です」 危ないちょっと移った。でも、そう言うと2人はやっと冷静になったのか、渋々と会計に戻った。もうやだこの店。さっさとこの業務用のスポーツドリンク3つ買って出よう。というか海の家にスポーツドリンクがあることに驚きだ。 「嬢ちゃんこれ1人で運ぶんか?」 「え、まぁ」 会計を済ませて商品を持とうとすると、ふいに眼鏡をかけている方が話しかけてきた。それに簡潔に答えると、今度はクセっ毛の方がかーっ!、と顔を抑えて反応してきた。何事 「こんなひ弱な女の子1人に運ばせるなんて…指示した奴の気が知れんわ!手伝おか?」 「あ、いえ大丈夫です」 成程心配してくれたのか。そんな心配は皆無なのだが。それでも一応お礼を言って、商品を持って店を出た。 「(何リットルあるんだろうなー)」 米俵のごとくスポーツドリンクを持って歩く姿は異様だったのか、道行く人から視線を感じた。そこまで重く無いのに。 「…細腕すぎるんに、どっからあない力を…」 「…人は見た目やないな、侑士」 あー、暑い |