やっとの思いで切原君の試合も終わり、柳君とも別れ、私は今再び1人で教室にいる。ちなみに切原君は試合に勝っていたので、今頃決勝でも行っているだろう。 「田代?」 「あ、桑原君」 いい加減鬱陶しくなってきたので鏡を見ながら髪を結っていると、教室に桑原君が入って来た。今日も頭の光り具合が絶好調だ、素晴らしい。 「もう競技終わったのか?」 「私は実行委員だ、競技には出ない」 「なるほどな」 俺もついさっき全部終わったんだ、と白い歯を見せながら話す桑原君。 「桑原君は何に出たんだ?」 「バスケとサッカー。バスケは運悪くお前らんとこと当たったし、サッカーも真田達のクラスと当たってな。勝てなかったぜ」 「桑原君は凄く運動が出来そうだが」 「ま、チームプレイだし仕方ねぇよ」 確かに桑原君1人が出来てもバスケとサッカーはチームプレイだ。チームワークがなければ出来ない。 「とりあえず、お疲れ様」 「あぁ」 そこで私達の間には沈黙が流れた。でも相手が桑原君だからか、特に居心地の悪さは感じない。むしろ、蒸し暑くてだれていた体が気休め程度に復活していく気さえする(それでも気休めなのだが)。本当に彼だけはテニス部らしくなくて良い。 「髪結んでるけど暑いのか?」 「あぁ、桑原君にはわからないだろうが」 「…おう、わかんねぇ」 「すまない、そんなつもりで言ったのではない」 「わかってるから大丈夫だ、ブン太からお前は天然だって聞いてるしな」 「?それはないと思うが」 天然というのはもっとこう、ふんわりとした女の子らしい子につくものだろう。私はそんな要素は皆無なゆえにありえない。という意を込めて怪訝な眼差しを向ければ、桑原君はまぁそれだから田代はいいんだよな、というよくわからないことを言った。まぁ、笑顔で言ってくれてるし恐らく褒め言葉なのだろう。だから私は一応ありがとう、とだけ言っておいた。 「これからどうするんだ?」 「真田のクラスとこのクラスがバスケ決勝なんだよ。だから見に行くんだ、田代も行かないか?」 「…あぁ」 本当は結構面倒くさいけど、桑原君に誘われてしまっては断れない。なんせ彼は類稀に見る良い人だ、断るのは申し訳ない。 ということで、私達2人は第2体育館に向かって歩き出した。真田君…クリケットの時は幸村君がいたからかあまり本領発揮出来て無かった気がするが、丸井君と仁王君が相手となればきっと容赦ないだろう。怪我人が出なければいいが。 |