1日の授業がやっと終わった所で、さっさと帰る為に足早に教室から出て、靴を履きかえて、解放されたように玄関を後にする。今日は疲れた、早く家に帰って寝よう。



「田代ー!」



そう思った矢先、後ろからとんでもなく不快な声が聞こえてきた。振り向かなくてもわかるその声の持ち主に、思わず眉間に皺が寄る。



「え、何無視?」

「どう頑張ってもそんな事させてくれないだろう」

「当たり前じゃん」



肩越しに私の顔を覗き込んでくるのは、今日の昼休みも1人でとても楽しそうに笑顔を浮かべていた幸村君だ。テニスバッグを抱えているところからして、これから部活なのであろうことが窺える。



「早く部活に行かないのか」

「えー冷たーい」

「…」

「ねぇ田代」



幸村君はそこで急に私の顎を掴み、目を細めて笑いながらこう言ってきた。



「明日も、楽しみだね」



幸村君がこんな風に言うという事は、きっと明日も何かあるのだろう。

私はテニスコートに走って行った彼の後ろ姿を蹴り飛ばしたい衝動に駆られたが、そこはなんとか抑えて自転車置き場に向かった。鍵を開けて、立ち漕ぎで校門から出る。お願いだから明日は、明日こそ、何も起こりませんように。



***



「(…あれ)」



そして翌日。身構えながら登校してみたものの、校門前に柳生君はいなかった。また昨日みたいに自転車置き場の茂みから出てくるかもしれないから油断は出来ないけれど、でもまぁそれなら自転車置き場に着く少し前に降りれば良い話だ。私はそんな甘い考えを胸に抱き、自転車を漕ぎ続けた。

が。



「…ん?」



後ろから物凄い足音がする。それも1人じゃない。ウォークマンのイヤホンを外して恐る恐る自転車に乗ったまま後ろを振り向くと、そこには



「待ちなさーーーい!!!」

「待たんかぁああぁ!!!」

「…うわ…」



物凄い形相をした柳生君と真田君がいた。いや、そんな気迫で待てと言われて待つなんて無理に決まっている。このまま自転車置き場に行っても先は見えているし、ならば自転車に乗ったまま彼らから逃げよう。

そう決心して再びペダルに足をかけると、頭上から笑い声がした。大体予想はつくけど一応上に目を向けると、案の定笑みを浮かべている幸村君とノートにひたすら何かを書き込んでいる柳君が吹き抜けにいた。そして、その幸村君の笑顔で私は、ここ最近溜まっていた鬱憤が一気に爆発した。



「…ふざけるな!」



この言葉が追いかけてくる2人に聞こえて、更に真田君が激情したのは言うまでも無い。
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