昼休みが終わった直後の授業、5時間目、古典。飯を食った後っちゅーことで睡魔が2人を襲ったんか、後ろからはうるさいいびきと静かな寝息しか聞こえん。

その事につまらんのう、と思いながら後ろを盗み見てみれば、案の定そこには自分の腕を枕にして寝とる2人の姿があった。ブン太は田代に顔を向けて、田代は窓側に顔を向けとる。あ、田代寝返りうった。



「(睫毛長ー)」

「スー……」



まじまじと田代の顔を見てみるのはこれが初めてだが、睫毛も長いし肌も綺麗だし綺麗な顔しとるのう、と思わず見入る。可愛い、とはまた違う、清楚で大人びた顔立ち。そう考えると、アイドル系の典型的な可愛い感じの顔が好きなブン太が田代に構うのは結構レアなことなり。どういう風の吹き回しか説明しんしゃい、ブン太。



「ふがっ!…うおっ!?」

「丸井くーん、うるさいよー」



俺が心の中でそんな事を思った途端、自分のいびきでブン太が飛び起きた。更には思いの外近くにあった田代の顔に驚き、声を上げる。その声を聞いたおじいちゃん先生がかるーく注意する。



「な、なんだよこいつも寝てんのかよ。俺のパクリだろぃ!」

「寝ぼけとんのか?」



理不尽もいいとこな意見を言いだしたこいつにそうツッコめば、流石に何も言い返せないのか「うっ」と声をもらした後に押し黙った。で、田代の寝顔を俺同様まじまじと見つめた後、小さな声で、どちらかというとあまり認めたくないように「睫毛なげえなぁ」と呟いた。着目点がブン太と同じとは、俺もまだまだじゃのう。こげん事口に出したらまたうるさくなるから言わんけど。



「っつーか、俺が折角起きてんのに寝てるとかマジ良い度胸。早く起きろコラー!」

「ブン太、あんまりしつこくすると」



知らぬ間に見入ってしまった事が不覚だったのか、ブン太は無理矢理話を逸らして田代の体を揺さぶり始めた。でも、こげんことしたら田代の機嫌が悪くなるのは目に見えとる。だから俺は手を伸ばして止めようとしたが、どうやら



「…丸井君」

「やーっと起きた!ほら、早く「ウザイ」えっ」



時既に遅し、というやつで。



「人が気持ち良く寝てるというのがわからない?何故それを無理矢理妨害する?」

「え、いや、あの」

「私は寝たいんだ。寝かせろ」



田代はそれだけを物凄い眼力で言うと、また自分の腕を枕に机に突っ伏した。一方、田代の寝起きの悪さを体感したブン太は、一言で言うならば放心状態っちゅーとこじゃ。確かに今のは怖かったなり。でも、どう考えてもブン太が悪い。



「に、仁王、こいつ超こえぇええぇ」

「自業自得じゃ。っちゅーかおまん、田代が嫌いなんじゃなかったんか?なんでそげん構う?」



そこで俺は唐突にこんな質問をブン太に投げかけてみた。実際理由なんて聞かんくてもわかっとるけど、反応を見るっちゅーのも一種の楽しみ方じゃ。

案の定俺の質問に動揺し始めたブン太は、しばらく狼狽したあと大声でこう言った。



「む、むかつくからに決まってんだろ!!」



説得力のかけらも無か。

そこでチャイムが鳴って、ブン太は「購買行ってくる!」と吐き捨てるように言い残し、全速力で教室を出て行った。足音うるさい。んでもって、バレバレ。

そんな感じで5時間目終了ー。
 3/5 

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