「おい田代!お前俺の天才的プレーよく見てろよぃ!」

「………」

「目開けながら寝てんじゃねぇよテメェエ!!」



3時間目、体育。男子はバスケで女子は器械体操なんじゃが、田代はさっさと終わらせたんか女子達とは離れた場所で腕を組みながら突っ立っとる。…これがどうやら、寝とるらしい。



「いやーマジあいつなんだよぃ、せっかく俺が直々に言ってやってんのに」

「そんなに見てほしいなら起こすまでじゃろ」

「田代田代田代田代ー!!」

「そーいうことじゃなかー」



俺が言ってるんはそういう意味じゃないっちゅーに、ブン太はこれまた馬鹿な行動を起こし出した。だから1回こいつの肩に手を置いて、とりあえず黙らせる。



「めちゃくちゃ格好いい姿で活躍すれば田代もその気になるかもしれん」

「…上等じゃねーの。おいコラお前次試合代われー!俺が出る!」



そうしてブン太は俺の言葉の真意を聞くなり、かなり意気込みながらナンバリングをつけて、試合に出るために俺から離れていった。正直清々したんは秘密じゃ。

で、その目を開けながら寝るっちゅー妙技を繰り広げとる田代にふと視線を移してみる。相変わらず腕組みして壁に背中預けとるけど、ほんまに寝とるんじゃろか?ただ単に反応するんが面倒、とか。

という疑問は一瞬に消え去った。田代の奴、1回首かくんっ!てなった。よく眠くてうとうとしとる時に起こるアレ。つまり、本当に意識が飛んどるっちゅー証拠じゃ。ある意味尊敬するなり。



「おらぁあっ!!早くパス回せってんだよ!」



爆睡しとる田代とは真逆に、ブン太はこれでもかっちゅーくらいボールを独占しとる。あの必要以上に無意味なうるさいドリブルは、田代を起こす為にやっとるんじゃろう。でも、他の女子は沸いとるけど、田代は依然として寝たままじゃ。

そうして試合を続けていくうちに、ブン太のスリーポイントが見事にネットをすり抜けた。それに女子達は更に沸いて、もはや黄色い声どころか雄叫びみたいな歓声が耳に入る。



「…お?」



シュートを決めてからも尚動き回るブン太から視線を移すと、女子の雄叫びで起きたんかこっちに目を向けている田代がおった。あ、あれが寝てない目な訳ね。微妙に違う。

田代はブン太の勇姿をいつも通りの、特に何も感じていないような無表情で見とる。素早い動きも、うるさいドリブルも、(意外にも)身軽に跳んでシュートを決める姿も、ただジーッと見つめている。ブン太良かったのう、田代に大注目されとるぜよ。



「おらおらー!!」



その田代の視線にブン太も気付いたんか、更にスピードとやる気を強めだした。俺はそんな2人の様子を見て、思わず口角を上げる。



「(かまってもらいたくて仕方ないんじゃのう)」



うるさく響くボールの音と大人しすぎる田代のミスマッチさに、俺は更に笑みを深めた。

さ、次の授業は、っと。
 2/5 

bkm main home

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -