大キライ、また明日

「だからいい加減人の顔見て喋れっつってんだろぃ!?」

「すまない、眠い」

「お前…っ!!」



はーい、仁王雅治による、丸井ブン太&田代晴香観察日記の始まり始まりー。



***



「おい田代、お前こんな問題も解けねぇのか?教えてやってもいいぜぃ?」

「いや、頭の中では理解してるけど書くのが面倒なだけだ。わざわざ言ってくれたのにすまない」

「…カス!」



数学の時間、頬杖をついて適当に授業を聞いとったら、後ろからそんな会話が耳に入ってきた。いくらなんでも理不尽すぎるブン太の発言に苦笑するも、田代はそんな奴に反発することなく無反応のままじゃ。代わりにブン太のヤケになってノートに文字を書きまくる音だけが聞こえてくる。…単純馬鹿。



「えー、じゃあこの問題をー…そうだな、丸井!」

「こっちの問題!?もう1個の方ならわかんのに!」

「丸井君、答えは3だ」

「…んなこと知ってるっつーの。先生、答え3!」

「3?違うぞー」

「はっ!?」

「想定外だ、すまない丸井君」

「お前…っ!」



今の会話には流石の俺でも噴き出しそうになり、慌てて手を口元に持っていく。田代には勿論悪気が無い所が、ブン太からしちゃあ苛立つんじゃろうけど、俺にとってはよけいに面白い。



「わかった丸井君、5だ」

「先生!5!」

「よし正解!田代に平常点プラスすっぞー」

「は!?ちょ、先生!答えたの俺!」

「天の声ならず田代の声をもらって答えただろ、お前にはやらん」

「すまない丸井君」



淡々とすまない丸井君、という台詞を繰り返す田代にまたもや噴き出しそうになりつつも、そこはお得意のポーカーフェイスで堪える。そして俺は、そこでやっと後ろを振り返って2人の様子を直接見ることにした。まぁ案の定不貞腐れてるブン太と素知らぬ顔の田代がいる訳だけど、予想通りすぎてこれまた面白い。期待を裏切らない、ちゅーのはまさにこういう状態を言うんだと思う。



「…何見てんだよぃ」

「完敗じゃの、ブン」

「うっせぇし負けてねぇし!」



喉を鳴らしながら笑った後に、続けて田代に視線を移す。…って、あれ、寝てる。つまらん。そんな俺の思考を読みとったんか、あろうことかブン太はシャーペンで俺の腕をプスプスと刺してきよった。じ、地味に痛っ!ちょっと叫び声をあげた所で次は俺が先生に当てられた。ちゅーても伊達に数学は得意科目じゃなか、こんなん余裕なり。俺の自信は外れる事無く、先生は俺の答えに満足げに微笑み、また授業を再開した。



「つまんねー。外れればよかったのによ」

「誰かさんの声を頼りにしとるおまんとは違う」

「マジぶっ飛ばしていい?」



おーおー怖っ。眉間に皺寄りまくりぜよ。っちゅーかそろそろ起きんか、田代。

とまぁそんな感じで1時間目終了ー。
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