「ほら、去年も騒いでただろぃ?サンタさんからゲーム届いたっすー!とか言って」

「てっきり冗談だと思っていたんだが」

「あれは素じゃよ。赤也は未だにサンタを信じとる」

「この前、ジャッカル先輩はサンタさんに何頼むんすか?って聞かれた時は流石に焦ったぜ…」



意味のわからない経緯でそのサンタクロース大作戦とやらの会議が行われる事になり、私達は今リビングでお母さんが用意してくれたお菓子をつまみながら、あれやこれやと話し合っている。なんでもこの作戦には、切原君にこれから頑張ってもらう為の景気付けという意味合いが含まれているらしいが、私が思うにただ単にこの人達の悪ノリだろう。でもこういう悪ノリは今に始まったことじゃないし、参加しないと言ったところで引き下がってくれるはずもないから、諦めて大人しく従う。



「具体的には何をするつもりなんだ」

「そりゃあサンタになるわけだし、プレゼントを届けに行くんだよ」

「不法侵入にならないか」

「赤也のご家族には既に話をつけておいたからその心配はいらないぞ!」

「プレゼントを買う手間が省けた、と喜んで下さった」

「切原君のお母様は非常に楽しいお方ですからね、賛成していただけて何よりです」



私の質問に三強と柳生君が答え、もう本当に逃げ場がないんだなと思い落胆した。別に作戦自体が嫌なわけじゃないけど、何より寒いし面倒臭い。



「で、衣装はこれな!」



一通りの概要を説明し終わった所で丸井君が手をかけたのは、実は入って来た時から気になっていた大きな鞄だった。そしてそれを乱雑に逆さまにし、中のものをカーペットに散りばめる。



「…冗談だろう?」

「人数分ばっちり用意してるのにそう見える?田代にはレディースのM買ったけど、お前細いからもしかしたらでかいかも」



そういう問題じゃなくて、という言葉は喉まで出かけたところで幸村君の笑顔により引っ込められた。

カーペットにはたくさんのサンタの服が広がっており、それらはまるで私をあざ笑っているかのように思える。まさかここまでやるか。



「プレゼントは安もんでも何でもいいから、とにかくあいつが喜びそうなやつを各自用意しようぜぃ!で、明日の夜11時半に赤也んちの近くの公園集合な。遅刻は厳禁!」

「田代が逃げようとしている確率は極めて高いから、通り道の俺が迎えに行く」

「え゛」



成功する可能性は低くとも一応立てていた計画をいとも簡単に見破られ、思わず濁った声が口から漏れ出る。そんな私を見て柳君は楽しそうに顔を綻ばせた。凄くイラッとした。



「じゃあ会議も終わったところで。田代、ツリーの飾り付け途中でしょ?手伝ってあげる」

「いやいい」

「遠慮しなさんな」



しかも話が終わったからやっと帰ると思いきやこれだ。最初から約束してたならまだしも、ダラダラするはずだった予定を覆されるのはどうも気が乗らない。でもこの人達は私のそんなテンションなんてちっとも考慮せずに、勝手に飾り付けをし始めた。

で、その流れで結局晩ご飯も食べて行く事になり、皆とお母さん、それに仕事から帰って来たお父さんと私との間のテンションの差は広がって行く一方だった。大阪人のお父さんを見て皆は、田代のお父さんが大阪人なんて意外、と言ったが、そんな違和感も一緒に食卓を囲めばすぐに消え去ったようで。



「息子がぎょーさん出来たみたいで嬉しいわぁ!あ、勿論晴香も大好きやけど!」

「いつでも息子になります!田代ママのご飯美味すぎっす!」

「あらやだブン太君ったらー!」



結果、やはり目眩がした。
 2/3 

bkm main home

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -