「柳先輩、まだっすか?まだっすか?」

「ちょっと待て、危ないからお前は近付くな。田代、お前もだ」

「む」



たくさんの薩摩芋を落ち葉の中に入れる事、どれくらいが経っただろうか。そろそろ良い頃合いだろうと思い、切原君と共に中の芋を確認しようしたのだが、その行為は危険だからといって柳君に止められてしまった。代わりに彼が竹串とトングを用意して、芋を引っ張り出す。別にそれくらい私にも出来るのに。



「上手く焼けてるといいな。すっげぇ良い匂いするぜ」

「そうだな」



隣にいる桑原君が話しかけて来たが、まさか彼に八つ当たりするわけにはいかない。だから代わりに、前にいる丸井君の背中を持っていた枝でつついてみた。



「うおっ!?ビビッたー何するんだよぃ田代!」

「概ね蓮二に止められて拗ねたんでしょ。赤也も」

「俺は食えれば別にいいっす!晴香先輩まだまだお子ちゃまっすねー?」

「えい」

「先輩考えて、その枝結構痛いから、傷残っちゃうから」



正直もう結構どうでもいいのだが、なんだか枝でつつくのが楽しくなってきた。だから私は良い反応を見せてくれる丸井君と切原君を追いかけ回し、嫌がる2人の事をつつき続けた。



「おーおーお前さんら、元気じゃのう」

「お前は何縮こまってんだよぃ!」

「仁王君は冷え症ですからね。それにしてもここまで寒がるとは、情けないものです」

「そうだぞ仁王!日々の鍛錬が足りんのだ!」

「お前は暑苦しいぞ、弦一郎」



大きな石に座っている仁王君、その近くに立っている柳生君と真田君とそんな会話をしていると、芋の様子を見ていたはずの柳君が近寄って来た。もう出来たのか、と思い次は彼に近寄る。



「餌があればくっついてくるとは、分かりやすい奴だな。もう出来ているぞ」

「きゃっほーい!!イモイモー!」

「晴香先輩、半分こしましょー!」

「やだ全部食べる」

「えぇー!?」



そして私達は全員で落ち葉を中心に円を作り、地面にそのまま腰を降ろした。柳生君が持って来た紙皿に、柳君が次々とトングで芋を乗せて行く。



「包んでいるアルミは熱いからな、絶対に素手で触るなよ」

「お箸も持って来ていますので、皆さんどうぞ」



渡されたお箸を一本ずつ両手に取り、お皿を地面に置き、まずはアルミを剥がす事に専念する。少しずつ見えてくる芋と湯気が食欲をそそりつい剥がし方が雑になってしまうが、隣にいる丸井君はもっと汚かった。



「んじゃ、いっただきまーす!」



切原君の声で芋を頬張る私達。丸井君とは逆隣にいる幸村君は、アルミを剥がすまでは丁寧だったけど、その後は意外と豪快に芋を手で掴み頬張っている。勿論私も手掴み派だ。



「田代、美味しい?」

「うん」



ホクホクと口の中に広がる芋は、とても甘くて美味しい。熱くてあまりいっぺんには食べられないが、それもまた味わう事が出来て良いだろう。



「美味いし楽しいし幸せっすねー!」



口の中を見せながら切原君がそう言えば、真田君がお父さんのようにその下品さを注意したが、皆も私も笑った。なんだか、全部が暖かい。そう思っているとふいに頭の上に手が乗っかった。だからその手の持ち主、幸村君に目を向けると、彼は目を細くしてとても幸せそうに微笑んでいた。芋、お代わりしよっと。


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