「田代ー、お前もゲームやらねぇか?」

「やり方知らない」

「教えますよ!意外と楽しいんですよ!」

「ならやる」



日吉と何やら話し合っていた晴香は、宍戸と鳳に誘われるなり次はそいつらの方へ行った。そうすると1人で詩集を読んでいた滝もそっちへ行き、テレビの前は一気に賑やかになる。そんな様子を、俺と忍足は見つめていた。



「嬢ちゃんモテモテやなぁ」

「なんか知らねぇけどあいつの周りには人がよく寄ってくる。無愛想な癖にな」

「無愛想やけど、冷たくあらへんからやない?」

「…まぁな」



忍足のこういう所は流石と言うべきか。勿論他の奴らも充分分かってるからこそ、こんなに懐いてるのだろうが。すっかり気に入っちまって晴香から離れようとしねぇジローを見て、静かに笑う。



「宍戸君、クッパ重い」

「クッパはでけぇからなー。っつーか初心者は無難にヨッシーとかにしとけよ、長太郎なんてピーチだぜ」

「ちょ、からかわないで下さいよ!」

「ジローのその幽霊はなんていうんだ?」

「テレサだよー。晴香マリカーやったことないのー!?」

「それ人生損してるぜ!ってあぁあぁ!?クソクソッ誰だよバナナ仕掛けた奴!」

「私だ」

「向日もバナナごときに引っ掛かるのはどうかと思うよ」

「ウス」



もう馴染むに馴染みきっている晴香を見て、俺と忍足は目を合わせ苦笑した。まぁ俺でさえあんな早く打ち解けたんだ、あいつらがこうなるのも無理ねぇか。

そう思っていると、ふいに俺達の元に日吉が来た。すぐ傍にある本棚に持っていた本を仕舞い、此方に向き直る。



「前から思ってましたけど、不思議ですよね、あの人」

「何か言われたんか?」

「まぁ。あの人の前では下手な嘘は通用しない気がします」

「あいつ自身は嘘を見抜こうなんざ思っちゃいねぇがな」



今回晴香を此処に連れて来たのは、確かにジローが遊びてぇと煩かったからっつーのが第一の理由だが、他にも、こいつらにちゃんと紹介したかったからっつーのもある。俺が学校で度々晴香の話を出せばこいつらは面白いほどに食い付いてきたし、学祭で折角少しは話すようになったんだ、その機会を無駄にするのは勿体無いと判断した。



「ほんまに祭り事が大好きやねんなぁ、跡部は」

「てめーらも同じようなもんだろ」

「否定出来へんわ。だってあの子ほんまにおもろいもん」

「…本当に、不思議な人だ」



晴香の方を見ながら不思議な人、と繰り返し呟く日吉の表情が、俺の中ではとても印象的だった。晴香、何言ったのか知らねぇがこいつにこんな表情させるなんて相当だぜ。



「ほなあれやろ、つまり跡部はウチの子自慢がしたかったんやな」

「あ?何言って…っておい晴香!コントローラー投げてんじゃねぇ!」

「キノピオが吹っ飛んだ、言う事聞かない」

「ぎゃははははっ!晴香ダッセー!!」

「やるねー」



そこで俺の思考は途絶え、冷静に暴れ出した晴香を止めるべくテレビの前へ移動した。ったく、他の奴らも笑ってねぇで止めろってんだ!



「なんやねん、ほんまに親馬鹿やん」

「えぇ、本当に馬鹿です」



俺達に囲まれながら微かに笑っている晴香を見て、爆笑してる他の奴らを見て、こいつがいる立海が羨ましいと漠然と思った。
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