「あ、柳君」

「田代か」



あれから少しして教室の片付けを終え、私はゴミを捨てる為に焼却炉に来た。するとそこには柳君がいて、彼はちょうど教室に戻る所らしい。



「B組から騒音が聞こえたが、何かやっていたのか?」

「賭け有りの風船割り。助っ人として幸村君が参戦してくれた」

「そうか、それならあんなに騒がしかったのも納得がいく」

「ちなみに勝った」

「だろうな」



柳君はそう言うと楽しそうに笑い、是非見たかったものだ、と言った。別にあれは私達が勝手に騒いでただけだから、見てる方は何も面白くなかったと思うが、まぁこれは口には出さないでおく。そして柳君は先を歩き始めたので、私もさっさとゴミを捨て彼の隣に並んだ。



「楽しかったか?」

「それなりに」

「こんな顔をしといてよく言う」



突如そんな事を言われ、こんな顔?と思い私が首を傾げた瞬間、目の前に携帯が広げられた。勿論彼のものだ。



「…いつの間に撮ったんだ」

「隠し撮りしてるつもりはなかったが。楽しさに夢中で気付かなかったんじゃないのか?」



そこには、ステージ上を見ながら皆と共に手を振っている私の姿があった。これは多分、開会式のオープニングで切原君がダンスを披露している時のものだ。満面の笑みという訳ではないが、確かに表情は締まりがなく緩んでおり、自分の事ながら気恥ずかしさを感じる。こんなものを撮るなんて柳君も趣味が悪い。



「私よりも仁王君とかの方が重症だろう」

「精市に至ってはビデオカメラまで持参していたからな」



そう言い、再び楽しそうに笑う柳君。…まぁ確かにあれは楽しかったが。



「まだまだあるぞ」

「どれだけ撮ったんだ」

「海原祭が終わったら全て送ってやる。まだ後夜祭もあるからな」

「はぁ」



相変わらず抜かりがないと言うか、なんと言うか。私はそう思いながら溜息を吐いたが、次に柳君が放った言葉に、思わずその息を飲み込んでしまった。



「そうすると、お前のその待ち受けも変え時だな」

「は」

「じゃあ、また後で」



颯爽と、清々しいほどの笑顔で自分の教室に入っていく柳君。私はその後ろ姿を恨めしく睨みつつも、自分の携帯をポケットから取り出し開いた。



「…いつからバレてたんだ」



画面には、去年の全国大会の後、打ち上げで行った河川敷にて皆と一緒に撮った画像が映し出されている(ちなみに今年は撮る前に日が暮れてしまったので撮れなかった)。これを気付かれたのが癇に障った私は、待ち受けを変える為に画像フォルダを引っ張り出したがそのほとんどが皆で埋め尽くされていて、結局変えようがなかった。
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