と、いうわけで。



「田代、追い返して良かったんか?」

「別に会えるのはこの教室だけじゃないだろう」

「確かにあのまま放置してたら大変な事になってたしなー」



結局皆には他の場所をまわってもらう事にして、教室からは出て行ってもらった。というか追い出した。のちに体育館で丸井君が出場する料理大会や、切原君が出場するカラオケ大会などが行われるし、体育館なら比較的騒げるからそこで合流すればいいだろう。というのが私の考えだったのだが、出て行く時何人かはそれはそれは不服そうな顔をしていた。特に、丸井君のファンであるジローは彼から離れなくて大変だった。

彼らが出て行ったと同時に彼ら目当ての女子達も何人か出て行ったので、ようやく教室内には落ち着いた雰囲気が漂い始めた。



「丸井!仁王!田代!来たぞ!」

「美味しそうな匂いがしますねぇ」



…が、一難去ってまた一難とはよくいうもので。真田君と柳生君があのエプロンをつけたまま私達のクラスにやって来たのだ。私達は顔を見合わせ、思わず溜息を吐く。駄目だ、やはりこの2人のエプロン姿はとてもイラッとする。



***



「んじゃ俺は行ってくっからな!応援頼むぜぃ!」

「あぁ、頑張って」



時間が経つのは早いもので、丸井君は教室から抜け出し一足先に料理大会の準備の為体育館へ行った。クラスメイト、お客さんからの声援を一身に受けて颯爽と出て行った彼は、相当自分の腕に自信があるのだろう。



「俺らはいつ行く?」

「後30分くらいで行くのが理想だが」

「あ、2人ももう行って来ていいよ!丸井君の応援でしょ?写メ撮ってきてねー」



私達が抜け出せるのはいつになるだろうか、と思っていたが、どうやら杞憂だったらしい。ウェイター係を仕切ってる女の子がそんな気遣いをしてくれたのだ。それに私達は礼を言い、持っていたおぼんを置いて教室から出た。



「お、仁王に晴香やん!」

「ほんまや」



廊下を歩いているとそんな声が後ろから聞こえたから、この声は、と思い振り返る。するとそこには色々な食べ物を手に持っている謙也と、氷帝の眼鏡の人がいた。あれ、なんかこの2人の組み合わせデジャヴ。



「ちゅーか自分、さっき謙也から聞いたんやけど、去年の夏海の家で会ってたんやな」

「あぁ、だからデジャヴが起こったのか」

「まぁ最初聞いた時、晴香はその事すっかり忘れとったけどな!」



そうだ、去年の夏皆に無理矢理海に連れて行かされた時、そこで幸村君にお使いを頼まれて、そのお使い先が2人が店番をしていた海の家だったんだっけか。確かその時2人は言い合いをしてた気がする。



「自分のそのほっそい腕であの量のドリンクを持ち上げた時はたまげたわー。ちゅーか紹介遅れてもうたけど、俺忍足侑士言うねん。氷帝の3年で、謙也とは従兄弟や」

「成程、だから名字が一緒なのか。田代晴香だ、よろしく」

「こんな時まで一緒なんて仲がえぇのうお前さんら」

「他の奴らも勝手にまわっとるしなー。あ、もしかしてこれから体育館行くんか?」



そんな成り行きで私達は4人で体育館に向かう事になった。お腹が空いたから謙也の手の中にある食べ物をとろうとすると物凄い勢いで拒まれ、そのケチさに私は反抗し、食べ物の取り合いが始まった。



「ガキやなぁ、食い意地張りすぎやろ」

「田代、なんか買っちょるから他の人のとるのはやめんしゃい」

「へ!ざまーみろっちゅー話や!」

「謙也ケチ」



もういい、後で丸井君が作ったお菓子全部食べようっと。
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