意外とわかりやすいんだね 「…何故こうなった」 目の前に広がる光景を見ながら、思わずそう呟く。 「さすが立海やなーでっかいわぁ!」 「先輩はしゃがんといて、田舎モン晒しとるみたいで恥ずかしいっすわ」 「今日は金ちゃんがおらんからまだ静かやなぁ」 「そうばいねぇ」 昨日他校の知り合い達にメールを送った結果、四天宝寺からは謙也、光、蔵ノ介、千里の4人がわざわざやって来た。常に賑やかな金ちゃんとラブルスがいないだけまだ四天宝寺は静かだが、問題は 「よく似合ってんじゃねえの。あーん?」 景吾君と愉快な仲間達だ。 「俺ね、おめえの事ずっと気になってたんだー!跡部が女子と仲良くするなんて初めてだC!あ、俺ジロー!よろしく!」 「あぁ、よろしく」 まさか総出で来るとは思わなかったから、この賑やかさには少々圧倒される。しかも、今私達が居る場所は校門前だからか周りの視線が尋常じゃない。だからそれから逃げる為に、2組の軍団を引き連れて歩き出した。 「跡部な、普段からしょっちゅう嬢ちゃんの名前出してんねんで」 「私の?」 「そーそー、だから俺達までお前の事なんとなく知っちゃってんだよなー。うける!」 そこで氷帝の眼鏡の人とおかっぱの人の話を聞いて、私は景吾君に視線を送った。しかし当の本人はそっぽを向いて話そうとしないので、仕方ないから彼らに視線を戻す。 「試合の時もいましたよね?」 「あぁ」 「変わってるよなー、跡部と対等に話せる女なんて早々いねぇよ」 「ねねっ、あとべの弱点とか知らないのー?」 「ジロー!余計な事聞いてんじゃねぇ!そいつは単純だからすぐ答える!」 「意外とホラー系には滅法弱い所とか」 「ほら見ろ!」 帽子の人、背が高い人、ジローも会話に入って来て、徐々にごちゃごちゃして来た。景吾君は何だか知らないが怒って頭を叩いて来たし。理不尽だ。 「それは本当ですか?」 「あぁ」 「ふぅん…良い事を聞きました」 それまで会話に入って無かったキノコ頭の人も加わって来て、いよいよ収集がつかなくなるな、と思ったから私は四天側に移動した。 「お、来たとねー」 「氷帝は私生活まで派手やなぁ」 「うるさくてしゃーないっすわ」 「ちゅーか晴香の店は何やっとるん?」 派手さでいったら四天も引けを取らないと思うが、そこは置いといて。私は謙也の質問にコスプレ喫茶、と端的に答えると、だからそないな格好しとるんやな、と納得され、笑われた。本当は今日こそは着ないつもりだったのだが、やはり丸井君と仁王君に無理矢理着せられてしまったのだ。やるせないが、ここまでくればもはやどうでもいい。 「お、田代おかえりーって随分集団で来たな」 「田代おかえりーおまんらいらっしゃいませー」 「うっひょぉおおぉ!!丸井君超似合ってるC!!やばいやばい一緒に写メ撮ってー!」 そんなこんなで教室に辿り着くと、店内は混雑していて忙しいのにも関わらずマイペースに作業を行っている2人がいた。が、ジローは丸井君の姿を見つけた途端思いっ切り彼に飛び付いた。どうやらファンのようだ。ちなみに言い忘れていたが、今日は丸井君は甚平、仁王君は浴衣というコスプレをそれぞれしている。彼らはなんとも涼しげなのに私だけこんな暑苦しいなんて、本当にどうかしてる。 「えっ!?ちょっと、あれって氷帝の跡部様じゃない!?」 「ていうか氷帝勢揃いじゃない!」 「待って、あの人大会会場で見た!大阪の学校の人!」 「白石君だよ!」 とりあえず皆を座らせようと席を準備していると、傍らからそんな声が聞こえた。そしてそれは徐々に増して行き、最終的に教室内にはちょっとした騒動が起き始めた。え、なんだ、この人気ぶりは。 「あちゃー、此処まで名前知られとんのかー。嬉しいのか面倒なのか複雑やなぁ」 「面倒に100票ー。部長、あんたも顔が見えへんコスプレすればえぇんやないっすか」 「おいお前ら、各々好きな所でも回ってろ。集団でいちゃ目立って仕方ねぇ」 「あとべ!俺は此処にいる!丸井君いるC!」 「あーもー、ジロ君暑いうっとおしい!離れろぃ!」 誰が此処に残るかだとか、じゃああそこへ行こうだとか、いやあっちが良いだとか、そんな事を討論し始めた皆。その間にも外野は集まって来て、終いには写真を撮り出す女子も出て来た。それに帽子の人が怒って、背の高い人がなだめて。景吾君は勝手に座ってるし、謙也はあたふたしてるし。ていうか皆うるさい。 ていうか正直この状況、とても面倒臭い。 |