「もー先輩達陣取りすぎっすよー!俺緊張しちゃったじゃないっすかー!」



前夜祭のオープニングとして華麗なダンスを披露した切原君は、それが終わるなり真っ先に私達の元へ駆け寄って来た。ダンスをしていたのは切原君の他にも何人かいたのだが、声援の数はやはり彼がぶっちぎりだった。流行の音楽に乗った激しめのダンスがよけいに彼を引き立てていたのだろう。ダンスを知らない私から見てもあれは中々サマになっていたと思う。

そして私達は切原君の出番が終わるなりすぐに最前列から抜け、体育館の後ろの方に移動したのだが、いやはや目立つ。まぁ、今に始まった事でもないか。



「晴香先輩もちゃっかり手叩いててくれましたよね!」

「…見えてたのか」

「当たり前っすよー!あ、ブチョ、後でムービー見せて下さいね」

「うん、ばっちり撮ったよ」

「ていうか仁王先輩なんすかそのうちわ!俺噴き出しそうになったっすよ!」

「それが狙いじゃき」



輪の中心でそれはそれは楽しそうに話す切原君を見て、よっぽど嬉しかったのだろうと予想する。丸井君が肩を組んで頭をわしゃわしゃと撫でてやれば、彼は更に顔を綻ばせた。ちょっかいをかけてくる真田君には若干ウザそうにしているが、勿論本気ではない。



「流石の身体能力でしたね。部活展示と踊りの練習を両立するのは大変でしたでしょう?」

「まーそこは俺の才能っつー事で!」

「ほんっと正直な奴だな、お前」

「へへっ!」



桑原君に軽く小突かれると、切原君は人懐っこい屈託のない笑みを浮かべ、そしてなぜかそのまま私に抱きついてきた。まさかこの流れで抱きつかれるとは予想外だったが、確かにオープニングは大成功に終わったし、褒めてあげる事も必要だ。だから私は彼の抱擁を拒否せずにそのままにした。



「さて、んじゃ先にグラウンド行ってようぜぃ」

「そうだね。確か今日は花火が打ち上がるんだっけ?」

「そうっすよ!早く行って良い場所とっちゃいましょ!」



幸村君の発言で初めて知ったが、今日は花火が上がるらしい。今私達がいる体育館ではまだイベントが行われているし、今からグラウンドに行けば良い場所を取れるだろう。というわけで、私達は集団で他の生徒より先にグラウンドに向かい始めた。



***



「(…凄いな)」



目的通り、花火が1番よく見えるかつ、人があまりいない穴場スポットに私達は辿り着いた。そして、適当に話す事およそ30分程だろうか。ふいに大きな花火が目の前に打ち上がった。そうするとそれまで騒いでたのが一気に静かになり、誰もがそれに魅入り始める。



「これを去年もお前と見たかったんだよ」

「私と?」

「なのに怪我なんかしちゃってさ、本当馬鹿だよね」



私も例外なく次々と打ちあがる花火を見ていたのが、隣にいる幸村君に話しかけられた事で一端それは閉ざされた。このタイミングで去年の話が来るかと思い、思わず彼の横顔を凝視する。



「これから先、いなくなったり、ましてや他の奴の所に行くなんて許さないから」

「…そうか」



私的にはいなくなったつもりも、誰かの元へ行こうと思ったつもりも無いのだが、幸村君が少しでもそう感じていたのなら仕方ない。だから私は視線を俯かせてそう返事をした。と、同時に頭に重みが乗った。



「別にお前に不満がある訳じゃないから勘違いしないで。一応、って事」

「…あぁ」



チラリ、とまた視線を幸村君に戻すと、ちょうど彼の笑顔が花火に照らされて、ただ純粋に綺麗だな、と思った。そして周りにも目を向けるとやはり皆笑顔で、幸せだな、と思った。
 3/3 

bkm main home

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -