とまぁそんな事もあったが、翌日無事に前夜祭はやってきた。日中の間に教室展示の最終確認を済ませ、夕方からは体育館、夜からはグラウンドで様々なイベントが行われる予定となっている。

この前夜祭は自由参加だから、1年の頃の私は勿論出ないですぐに帰ったし、去年も入院していたから出れなかった。だから今年が最初で最後の参加という事になる。



「ほら、早く行こうぜぃ!」

「そう焦りなさんな」

「確かに、どうせ今から行っても混んでるんだし焦っただけ無駄だろう」

「しけた事言ってんじゃねーよ、こういうのは楽しんだもん勝ちだろぃ!」



楽しんだもん勝ち、という言葉に何処ぞやの浪速軍団が頭に浮かんだ。そういえば元気にしているだろうかなどと思っていると、ふいに手を掴まれ走らされた。言わずもがな、犯人は丸井君だ。隣を見ると仁王君も同じ目に遭っており、視線を絡ませ、そして噴き出すように笑った。



「田代がいる前夜祭だし、暴れるしかないだろぃ」

「ま、そこは同意なり」

「…そうか」



そういえば、切原君が有志ステージに出るから絶対見に来てくれ、とか言っていたな。確かトップバッターでやるとかなんとか。あぁ、だから丸井君はこんなに意気揚々としているのか。なんだかんだで後輩思いなのは相変わらずだな。とか思いつつも自分もちゃっかり走っている事に気付き、私はまた笑った。



***



「蓮二、赤也は何処だ?」

「気が早すぎるぞ。まだ幕も開いていない」

「ほんと真田は親バカだなぁ」

「幸村君、その手に持っているカメラは…?」

「え?録画用に決まってるだろ」

「おっ、お前らも来たか!」



体育館に辿り着くと案の定そこは人で溢れかえっていて、ステージの前まで行くのは無謀なように思われた。しかしそこは流石彼らというべきか、少し媚を売れば女子達は簡単に道を開けてくれた。若干悪い気もしたが、既に最前列を陣取っている三強と柳生君、桑原君を見てそんな事はどうでも良くなった。親バカさでは確かに真田君が群を抜いているが、わざわざカメラまで持って来たところからして幸村君も相当らしい。もっとも、結局は全員に言える事なのだろうが。丸井君もポケットから携帯を取り出して、既にステージに向かってカメラ機能を発動させている。



「全く、どいつもこいつも浮かれすぎなり」

「…仁王君、その団扇は?」

「さっき作った」



呆れたように呟いた仁王君に目をやると、その手には学校側から配られた学祭オリジナルの団扇が持たれていた。その団扇は、片面には海原祭というロゴと共に生徒会が考えたイラストが書かれているのだが、もう片面は真っさらな状態だ。しかし仁王君は、その真っさらな方に大きく、あかや!、という文字を書いていた。まるで何処ぞの男性アイドル集団のライブのようだ。…人の事言えないだろう、どう考えても。

周りに立っている親バカ集団を見ながら小さく溜息を吐くと、体育館の照明が消え、大音量で音楽が鳴り響いた。さぁ、前夜祭の始まりだ。
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